恋心は超グリーディ

普段質問されることを文章起こした場所です。ライブ配信やゲームイベントにまつわるものです。もしくは、たまに筆者の趣味の文章が交じります。

Feb 25, 2018 -

G5 第4章

Genesis5 旅日記の第4章。大会3日目、最終日について。

部屋に響いた扉の音。Crow さんが部屋に帰ってきた。時刻は朝6時頃。同じ頃、ベッドに潜っていた Brood, Takoman および私は目を覚ました。

“代替メッセージ”
[朝の部屋の様子]

Crow「Charliedaking や Elegant とめっちゃ対戦しました。」

Genesis5 は会場が今日まで24時間オープンだったため、Crow さんは徹夜で会場に居たプレイヤー達と対戦していたらしい。こういった無茶が出来るのも、大規模大会の特権である。別にお互いが日本・アメリカに居ても、ネット上で会話をすることは出来るが、会話の端緒となるきっかけはどうしてもオフラインで対面しないと出来ない。

Crow さんはようやくの休息に就いた。一方、目を覚ました Takoman さんは、iPad を持ってそそくさと外出の支度を始めた。

Takoman「ケンタロス出現したんで。」

PokemonGO で、北米にしか出現しないポケモンが近場で発生したらしい。意味は分かるが、ここはオークランドである。Wikipedia にも「治安は良いとは言えない」と明記してある。私は制止した。

Takoman「でも、このために母さんとお姉さんのiPadも預かって来ちゃったんで。」

意固地にそう主張して、Takoman さんはひとりオークランドの街へケンタロスを捕獲しに出た。(ちなみに無事帰ってきた。)

“代替メッセージ”
[ホテルレストランでの朝食]

Oaklandの街

この日はGenesis5大会最終日である。最終日は、各種目のFINALS(主にTop8のこと)がステージで実施される、別枠なイベントである。各種目8名以外は観客に徹し、女神に選ばれた8名だけが壇上にて競技する特権を享受する。今年は、スマブラ64, Rivals of Aether, スマブラWiiU, スマブラDX の順に進行する課程となっていた。

“代替メッセージ”
[オークランドの街並と日本勢。左壁の絵柄は装飾か落書きか?中央ビルの窓には “Kill the Man” と書いてある。]

こうしてふたたびオークランドの街へ徒で出でた。ホテルを出ると、朔風が外套を突いて寒い。それは決してケルビン的なモノではない。殺風景な空虚感が車線の広い街に漂い、不安が一行に押し寄せた。途中スケボー集団の溜まり場もあり、不慣れな風情に覚える日本人的臆病さが本能的に走った。
実は会場に一度着いたが、スマブラ64のTop6が2時間以上押しているということを受け、とんぼ帰りして今日もバーガーキングへ向かった。

“代替メッセージ”
[バーガーキングふたたび]

今回はランチということで、小銭をせがんでくる常連客が3名に増えていた。レジも1つしか稼働していないため、長い列に執拗に小銭は迫り来る。前回と異なる点は、店内に「G5」の名札を首から下げたアメリカのプレイヤー達が沢山周囲に座っていたため、どことない安心感があった。

ランチ後、万を持して開場へ向かった。往路のストリートの途中で、堂々とスーパーで大麻を売っていたので私も驚いた。帰国後に努めて調べたところ、カリフォルニア州では大麻の発火吸引が合法とのことである。(大量所持や販売には認可か資格が必要そうである。)街角のスーパーに、

「リアル大麻 有ります」

と貼り紙がが普通に出ているため、流石に不意をつかれた。私は煙草も吸わないため味わうことが無いのだが、異国のこの異文化はもはや情緒と捉えている。

飄々の者たちの間を、天地に沙鴎が飛び抜けて往った。

“代替メッセージ”
[写っていないが、この交差点の売店にリアル大麻を売っていた]

会場:Paramount Theater

はっきり申し上げて退廃的なストリートは、概してグレーの水彩のようで、活気と雑踏を欠いていた。そんな歩道を進むと、Top8会場である Paramount Theater(パラマウント・シアター)が視界にそびえて視える。背が低い建物が並ぶ中、一際縦に貫かれた、古めかしいネオンサインのデザインが景色に顕著であった。

“代替メッセージ”
[Paramount …見えますか?]

“代替メッセージ”
[会場入口]

Paramount Theater は1920年代、アメリカが第一次大戦の戦勝に湧いて自信を付け始めた近代大国のまさに黎明期に、活動写真を上映する目的で建てられた。その姿は、アメリカに在りながらにして私の愛するアール・デコ建築を匂い立たせ、世紀の分かれ目にアメリカが感じた、強国の自信とヨーロッパへの劣等感を混合した実像であった。げに、ウィルソン大統領の影を見るようである。

“代替メッセージ”
[会場入口正面]

首から提げたG5の名札を見せて、ドアを通過。(Fatality が何故か名札が無くて入り口で必死にカバンを漁っていた。)内部は、明度こそ路上より落ちるものの、慎ましいライトアップが立体的な空間を灯し、開放感でゲーマー達を包んだ。外装に劣らぬ荘厳な呈であった。

“代替メッセージ”
[会場:置物と鏡]

“代替メッセージ”
[会場:通路のソファ]

“代替メッセージ”
[CrowさんとMkLeo, Top8前に]

鶯色のカーペット、真鍮と思しき手摺り・細工、仄かな灯りは益々上記のアール・デコを思わせた。2階建ての通路構造は、パレスのボールルームを彷彿とさせ如何にも優雅である。

“代替メッセージ”
[会場:シアター]

そして本命のシアターは、紛うこと無き劇場である。カーペット文様のかかるステージは、2本の大きな大理石の柱に囲まれる。側面はまた曲線的な装飾が施して有る。縦に傾斜のある2階建ての客席は擂鉢状に近く、ステージが写真よりも間近に視える。古きアメリカと謂うべき、派手な造りであった。
この会場も、チケット販売等はシアター側が行っているのだが、スマブラ勢によるGenesis5運営が貸し切って進行していると考えると感慨深いものがある。

WiiU Top8

予定より遅れること2時間。スマブラWiiU Top8 開幕のPVが流れた。 Coney が下手よりマイクを手に見得を切って入場。スマブラWiiU Top8 の、遅い幕入りを告げた。前座にConeyが観客を前に、レッドブルを一気呑みすると、会場が天地をゆるがす喊声と快哉で包まれた(註釈すると、アジア人は格別カフェインに強いため、白人のカフェイン一気呑みは日本人には理解し得ないスリルがある)。

![“代替メッセージ”](/images/G5/スクリーンショット 2018-02-17 2.03.45.png)
[Smash4 Top8 (VGBootCamp)]

マイクの流れに乗って、ESAM と Nairo が入場した。敗者側から進行する。このTop8は、実況のD1が指摘していたが、退位したZeRoの玉座を取り合う象徴的な舞台となった。確かに昨年のGenesis4優勝はMkLeoなのだが、このTop8は Genesis の枠には収まらない、そういった空気があった。絶対王者ZeRoは直前に引退を発表した。今ならば誰にでも登極する資格がある。ZeRo の居ない最初の大会なのである。(前にも述べたが、スマブラには大規模大会が幾つも存在する。ZeRo は最も多く優勝し最も安定していたが故に世界ランク1位だったのであり、その王者が態々Genesis5を目前に引退したことが、今回のGenesis5を神秘化させている。)

その中で、この日の Mistake の眼光には炯々としたものが宿っていた。新星ながらこのTop8、ガン攻めのスタイルで地元(半分)の Falln を倒し、Dabuzを倒し、Nairoを倒した。特にDabuz, Nairo は前作以来の強豪であり、Genesisも毎度上位お馴染みのスターであった。敗者側を駆け上がり、遂には敗者側決勝まで上り詰める。まさしく登竜門。遂には、敗者側決勝にて Salem を墜とした。Salem はEvo2017にて ZeRo を倒して優勝した英雄であり、なによりも Mistake と同キャラ(ベヨネッタ)という点もこの勝ち星を輝かせる。

最終決戦は、タイトルホルダーの MkLeo と、カナダの若手 Mistake の激突となった。鈍く輝く装飾に包まれたParamount の舞台、冠の行方は17歳同士の手に委ねられた。Mistake の猛攻は手を緩めなかったが、MkLeo の流麗な間合いを踏むマルスはその一手先を行き、ゲームカウント 3-1 で優勝を勝ち取った。こうして MkLeo はGenesis連覇を達成し、ZeRo の亡き世に新たに覇を唱えた。

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最後に補足。昨年の旅日記で、私はGenesis5の優勝者を「未だ名を聴かぬどこぞの某なのかもしれない」という予測を立てたのだが、Mistake があと1勝していればその予言が的中していた。Mistake は昨年2月の Frostbite が初めてのメジャー大会だったため、これは何も誇張ではない。また、Mistake は実はTop8に入ることを本人も予定しておらず、この日曜帰りの飛行機を取ってしまっていた。スーツケースを曳きながら準優勝のメダルを受け取ってのち、式が終わることも待たずにダッシュで去り、ゲートが閉まる5分前にオークランド空港に乗り込んだそうである。この日の「ガン攻め」は、時間への焦りがそうさせていたとも言える。

DX Top8 の顛末

我らが去った後の会場では、スマブラDX Top8が執り行われていた。私は疲労と次項目にある睡眠調整のためにホテルへ帰った。

スマブラDXには、長く語られる「五神」(Five Gods of Melee) が存在する。今回Top8に残った五神メンバーはHungrybox(Liquid), Armada(Alliance), Mang0(C9)の3名である。Genesisには一種の呪いがあり、DXの決勝は過去4回全て Mang0 vs Armada であった。

![“代替メッセージ”](/images/G5/スクリーンショット 2018-02-19 18.01.26.png)
[ Genesis5公式写真 より]

その神話が崩れたのは、勝者側の出来事である。Plup(シーク)がArmada(ピーチ)を下した。これで決勝の Mang0 vs Armada の可能性は消えた。そのまま怒涛の快進撃を続け、Plup は最終決戦にて「現世界ランク1位」Hungryboxを倒し、優勝を勝ち取った。

Plup の優勝に、世界が湧いた。まさしく創世記。新たな時代の到来を、Genesis5が啓示した。

思い出に浸りたい方は、こちらのURLが全ての結果である。 https://smash.gg/tournament/genesis-5/events

其の頃。

ベッドの中でスマホにてツイッターをいじっていた所、見逃し切れないニュースが目に飛び込んだ。「日本が大寒波による大雪」という情報を聞きつけ、決断。LINEグループにて「日本勢は朝5時にホテルロビー集合」との旨を伝えた。チェックアウト済みでという条件付きである。

元々Brood, Takoman はホテルを朝3時発の予定であったが、他のメンバーは必ずしもこれ程早く荷支度する必要は無かった。それでも、雪は航空機の天敵であるため、決断をする必要があった。私は時差ボケも助けて21時に眠りについた…

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