恋心は超グリーディ

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Feb 4, 2018 - review others

プリキュアアラモードはデカルトなのか

こんにちは、プリキュアを視聴するマシーンです。今日は、名作アニメ『キラキラ☆プリキュアアラモード』の結末とその哲学について考えてみたいと思います。

プリキュアアラモードストーリー考察です。この記事は『キラキラ☆プリキュアアラモード』の全てを出しますので、ネタバレが不安な方はご遠慮ください。また、キャラのイラストは出しませんのでそのつもりでいてください。ご覧になりたい方は↓ こちらのリンクから。

キラキラ☆プリキュアアラモード website

あらすじ

『キラキラ☆プリキュアアラモード』はプリキュアシリーズの13作品目です。この年から神木優プロデューサーとなり、女性プロデューサーは初ということで話題になりました。

バラバラの趣味を持った中学生から高校生の5人が、「スイーツが好き」という共通の趣味を見つけて仲良くなります。時には街に襲来する悪の権化と闘う「プリキュア」となって活躍します。今年のプリキュアは、「好き」をエネルギー化した「キラキラル」✨✨という力を駆使して戦闘します。

正直申し上げると、序盤は展開がぬるくて義務感で毎週見ていましたが、15話くらいからキャラの掘り下げが始まり、どんどん加速する面白さがありました。各キャラの「好き」を1年かけて追究する描写は、つい次回が見たくなるような魅力があります。
例えば:誰からも頼られるけれど妹を想う気持ちに揺れる あきらさん や、お嬢様だけどロックバンドに打ち込みたい あおちゃん 。そして複数キャラが絡んで各キャラの「好き」が衝突する回。

…そのため1年を通して視聴する見応えがあります。

「敵キャラ」

今回の所謂「敵キャラ」はタダの悪いヤツではなく、「好きの成れの果て」というポジションになっていました。 敵キャラ一覧

例えばジュリオ。彼はキラリンの弟です。姉への尊敬が空回りして嫉妬へ繋がり、敵側へ目覚めてしまいました。

敵の組織が「好き」の具象化である「キラキラル」✨✨を枯渇させようと活動しているのは、「好き」の気持ちが争いの根源になるからという発想です。実は平和・平穏を願っている組織なのです。そのため作中では「悪」「敵」といった表現はありません。意図的だと思いますが、この記事では便宜上「闇」と呼びます。「キラキラル」✨✨を武器にする「プリキュア」⭐と、それを否定する闇の組織。この対立が、最終戦に関係します↓

最終戦

最終戦は凝っていました。

先代プリキュア「ルミエル」と、闇のボス「ノワール」。この2名の対立が100年前から始まり、今も続いています。ルミエルは精霊として街を守り続け、ノワールは霊体のまま闇の組織を支配しています。プリキュアと闇の組織の対立は、この二人の代理戦争です。この二人の対立がどのように生じたのかが、最終戦で暴露されました。

実はノワールは元は一市民でした。そんなノワールはルミエルに片想いをしていたのですが、ルミエルがそれを拒絶したため、ノワールが闇に目覚めてしまい、戦いは始まりました。

“代替メッセージ”
[図1]

一方ノワールが闇に目覚めた際、エリシオという人物が生まれました。ノワールは失恋に絶望し、闇の霊体となり、元の肉体は捨てました。逆に、残された心の無い人間が「エリシオ」です。

“代替メッセージ”
[図2]

そして迎えたプリキュアアラモード48話。ホントの最終決戦です。
なんとここで、エリシオが先代「ルミエル」とボス「ノワール」を飲み込んでしまい、ラスボスとして君臨します。解釈としては、「好き・嫌いという感情があるから争いが起こるので、無感情こそ至高」という主張です。

世界崩壊、からの再構成

エリシオは強く、戦いの結果一度は世界が滅んでしまいます。しかし、精神世界でプリキュアはエリシオと和解し、地球を再構成して世界を救います。これが、プリキュアアラモードの最終決戦です。
これを以下、私がどのように解釈したか説明します。

心身二元論

今作品で目立つのは、見出しにあるように「心身二元論」です。単純に表すと「心と体は別物」という思想です。

そもそも長老という妖精は、肉体を持たない霊体のまま1年を過ごしました。双方のボスであるルミエル・ノワールも魂だけの存在として登場します。また、エリシオは元はノワールの肉体でした。ジュリオも一度は魂が消え肉体のみが残りますが、ルミエルの力で完全復活しました。このように、プリキュアアラモードでは魂と体は別のモノとして扱われます。

48話の戦闘を振り返りましょう。最終決戦、エリシオに世界中の人の体が消され、魂・物体全てがエリシオの中に吸い込まれてしまいました。しかし、魂だけが「キラキラル」の形で残存して、みんな生き残るシーンがありました。この作品では、魂 = 心 = キラキラル = 「好き」という感情 として描かれました。[①]

“代替メッセージ”
[図3]

更にこの作品では、心に優先度があります。魂さえ有れば、肉体はなんとか復活できます。心が身体を定義するという発想が見えてきます。(逆は無理で、ジュリオみたいに大変な目に遭います。)ここで次の項目に行きましょう↓。

我思う故に我有り

デカルトの謂う「我思う故に我有り」とは、心身二元論に於いて、この世に存在する物質が本当に存在するかどうかは全て懐疑してかかるが、その懐疑している主語である自分の心は存在を疑う余地が無いという理論です。

プリキュアアラモードでは、これと似た発想が登場します。

「自分だけの大好きが無くなったら、それはもう、私達じゃない」(キュアホイップ, 48話)

論理上どうかと思いますが、便宜的に改変すると「大好きが有るから私達が定義される」となります。定義のスタートは心から始めるという点で、デカルトの「我思う故に我有り」と共通しています。
ここから、上記の「心の優先度」が説明できます。この作品では 大好き = 心 ですので、心さえあれば自己が定義出来、肉体は後からなんとかなる訳です。

“代替メッセージ”
[図4]

これを受けて、段落①に話題を戻しましょう。エリシオが全てを破壊したように見せかけて、みんなは魂の状態になって生存していました。

そんな中で、キュアホイップは精神世界でエリシオの魂を見つけます。エリシオは肉体だけの存在のはず[図2]でしたが、エリシオにも 魂 = 心 がありました。エリシオの発生起源に立ち返ると「好き・嫌いという感情があるから争いが起こるので、無感情こそ至高」(上述)という主張があるため、感情があると言える人間でした。無に見えて、実はどうしても心が存在してしまったのですね。

プリキュアはキラキラルを操る力があるため、最後にエリシオと和解し、エリシオのキラキラル(=魂)をスイーツの素にして、物質世界を復活させます。ここだけはプリキュアアラモードを視聴していないと意味が分からないと思いますが、プリキュアはキラキラルを使ってスイーツを生成出来る存在なのです。これは定義です。…こうして戦いは終わり、世界も再構成され、無事一件落着、いいアニメでした。

プリアラはデカルトであったか

過去のプリキュアでも心の闇を利用する敵もいましたが、魂と体はワンセットでした。プリキュアアラモードでは「魂さえ残っていれば物質世界を演繹的に再構成できる」という魂の優先性が、他のプリキュアと異なります。こういった理由から、私はプリキュアアラモードの最終決戦にデカルトの合理論を見ました。

最後に

今作は、各キャラクターが1年を通して自分の「大好き」を追究していく作品で、個人回で深く掘り下げるように設定されています。主人公いちかの最後の個人回が最終決戦として描かれており、大好きの定義を描いたのは上手いと思いました。

最終決戦の正当な見方としては、主人公 いちか は、苺をモチーフにしたキャラクターであり、誕生日が1月15日に設定されています。ラストバトルはいちかの誕生日にリアルタイムで発生します。時期と語呂を合わせた粋な演出です。

本来プリキュアはこういった側面を楽しむアニメではありませんが、数年後にまた自分がこの記事を読んで、自分の楽しみ方を思い出すために書き留めました。

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