恋心は超グリーディ

Blog by Ayuha/アユハ. 自己紹介はこちらから:『恋心はグリーディ

集客の心理における『天岩戸』考

人間が集まることの心理の根本には、なにがあるのでしょうか。勝手な話ですが、私の持論を述べたいです。

人がイベントを認知し、影響を受けて、行動に移す迄にはどのような流れがあるのでしょうか。前回のブログ では「エンゲージメント」に関して記しました。しかし、そこでは理論では説明しきれない要素もあることを最後に述べました。

その理論を外れた要素、もしくは盲点と言うべきでしょうが、日頃あまりにも人様に説明することが多い一つの「持論」がございますので、ここで書き残しておきます。ゲームのイベント運営の方に読んで頂きたいですが、おそらくゲームに限らず催事には大体当てはまる理論かと存じます。今回の「イベント」とは、オフラインのものを想定しています。

1. Introduction : 発端

マンガ『花の慶次』(原作:隆慶一郎, 漫画:原哲夫, 脚本:麻生未央)は戦国時代を描いた作品です。週刊少年ジャンプにて連載されていました。今回の「持論」はここに端を発します。

"代替メッセージ"
『花の慶次 -雲のかなたに-』2巻 Amazonプレビュー

このマンガに伊達政宗が登場するシーンがございます。余所者に決して会おうとしなかった政宗が、主人公:慶次の前につい姿を見せてしまうシーンです。そこで政宗の側近:片倉小十郎が、「天岩戸」のエピソードを引き合いに出します。私はこの描写に非常に感銘を受けました。以下、この過程を説明いたします。

2. Background : 天岩戸とは

まずは『天岩戸』原典についての説明です。勿論、ご存知の方が多いでしょうからこの章は飛ばしても結構です。
「天岩戸」のエピソードは『古事記』『日本書紀』の双方に登場します。微差はございますが、内容はだいたい以下の様です:

「ある日、天照大神が洞窟に入り、岩で入口を塞いで完全に引き籠ってしまいました。するとこの世が闇に覆われてしまったため、困った神々は洞窟の前に集まり、宴会を始めました。するとその音に惹かれて、天照大神は岩の扉を開けて出てきた。」

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[天岩戸のエピソードを描いた『岩戸神楽乃起顕』(国貞改二代豊国, 月刊京都史跡散策会)]

便宜上凄く簡略化してしまいましたが、日本神話を貶める意図はないのでどうかお許しください。詳しくご覧になりたい方はまずは Wikipedia をご覧になるか、適宜ぐぐって頂ければと存じます。

3. Proposal :『花の慶次』での解釈

こちらの神話ですが、マンガ『花の慶次』では以下のように解釈されていました。(本当はコマを撮って載せられればベストですが、権利の取得方法が分からなかったため断念です。以下、引用の形で掲載いたします);

なにゆえ “天照大神” は天の岩戸を開けたと思う?
岩戸の外から聴こえる笛や太鼓の音色がそうさせたのではない…
笑い声だ… 八百万の神の笑い声が岩戸を開けさせたのだ

『花の慶次』12巻

場面としては 1. の通り伊達政宗との面会場面なのですが、ストーリー上での意義は実際に『花の慶次』を読んで頂いてご確認ください。

ここで『花の慶次』が指摘した「天岩戸」の解釈は、人間の真髄に触れていると感じました。

人に会うことを拒んだ天照大神が、人前に姿を表すきっかけになった要因は、通常考えられるのは「宴会」の存在です。それは演奏であったり、芸であったり、一種舞台上の演目でございます。宴会にとっての演目は、言うなれば「本質」です。
ですが『花の慶次』で指摘されているのは、「本質」(=演目)が主要因なのではなく、それを参加者の「人の和」が主要因になっているという点です。

4. Discussion

天の岩戸の以上の解釈を、ここでより吟味してみましょう。

他の例を挙げますが、私の経験上、学習塾で話しましょう。学習塾は義務教育ではありませんから、行くことをどこかで決断せねばなりません(もしくは保護者が行かせる決断をします)。どこかで塾に行く決断をするとき、それは学力が上がるというメリットが決断の原因であることは体面上であり、専らの理由は「周りの皆も行っているから」ということであります。ここで学力の向上は「本質」であり、周りの皆が「人の和」という訳です。…という理屈は、皆様の経験的直観と合致するでしょうか?細かく議論をすることも出来るのですが、ここでは漠然と納得頂くために、「本質」と「人の和」に関してこのように理解頂ければと思います。

私も「本質」の全てを否定している訳ではなく、「人の和」に全てが有ると申し上げている訳でもございません。『花の慶次』での天岩戸も・上の学習塾のケースでも同じ程度に、「人の和」が「本質」よりも要因に対して大きく寄与していると申しています。

それでは、それを普段の我々に馴染んだゲームの内容に適応しましょう。“ゲームイベント” といえば、どのような告知文句があるでしょうか;

  • プレイヤー人口の多い人気ゲームの大会
  • 賞金が高い
  • 世界に繋がる
  • 競技レベルが高い
  • 有名タレントが来る

"代替メッセージ"
[国内の事例を出すのも憚られますので、国外の例で]

こういった告知文が全てではないにしろ、こういった告知文が存在することは賛同頂けると思います。これらの告知文は分類すると「本質」に当てはまります。

今日ここで言いたいことは、これらは「本質」の告知文は、勿論魅力にはなるのですが、超越的な魅力にはならないということです。極論で仮定しますが、ゲーマーは自宅の岩の扉に引き篭もっていることが屡々有りますから、彼らの扉を開く要因には何が必要でしょうか。寧ろ、今日の理論を適応すると、扉を開ける要因は「人の和」です。身近な友達が、イベントに参加して楽しそうにしている様子を Twitter で見て、「行きたい」と思うことがあるということです。

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[Darimoko : UmeburaFinal より]

(私も関わっているケースですが、日本のスマブラのユーザーオフ大会は、人の和を魅力に持っています。)

確かに前回のブログ でも述べたように、有名パーソナリティを起用してエンゲージメント率を活用し集客を達成する方法もありますが、これにて集められるのはエンゲージメントの理論通りの参加者数です。上記のような「告知文が無い」時(有名人がいない・賞金がない・競技レベルが高い etc)、人が集まる理由を説明出来ません。例えば C4LAN のようなイベントに数千人が集まる動機が説明出来ないのです。「人の和」には、理論を超えた力があることが類推できます。(こまで来てなんですが、人の和に関する理論があったらお教えいただけますと幸いです。)

よって、もし昨今の流れに乗って “esports イベント” を開催し、広く有望な士の来場を求めているのであれば、「esports は世界でこれほど盛り上がっていますよ!」を告知するよりも、過去に自分が開いたイベントの例を写真で公開する方が、人の心に響くのではないでしょうか?逆説的ですが、身近な笑顔は引き篭もった神すらも扉から引きずり出す力があるのです。「esports は世界でこれほど盛り上がっていますよ!」といった謳い文句は、つまらない大人をタイマンで説得する切り札として心にしまっておきましょう。

5. おまけ : Expected Questions 想定される質問

そこで以下のツッコミが想定されます:「人の和を写真でアピールしなきゃいけないなら、初めてイベントを開催する人はどうすれば良いんだ?!」
…ごもっともですが、そこは友達をなんとか誘って形にして頂くほかありません。初めてのイベント開催で人が集まると想定する方が無理が有ると思います。一度きりのイベントで人を集めることは非常に難しく、海外の事例ですが、中国・台湾では葬儀に於いて来客を集める必要性がありました。そこがインフレしたあまりストリッパーを招待する慣習が根付いてしまい、中国国家の文化省はこれを禁ずるに至りました。[詳細Huffpost] 一度のイベントで人を集めるというのはこれほど至難の業という訳です。

もう一つ、想定されるツッコミがございます。「実際に海外では “賞金1億円” という告知文はあるじゃないか」ということです。最たる例で上記の Quake Champions の画像がございますし、Dota2 The International は毎年賞金額を謳い文句にしています。ここで忘れてはならないのは、海外で盛り上がっている世界の頂上大会では既に「本質」と「人の和」の双方が備わっている点です。決して「人の和」ナシに告知がなされている訳ではございません。逆に言いますと、日本で「人の和」が無いのに「本質」の告知が行われている時、我々は違和感があるのではないでしょうか?

"代替メッセージ"
[Dota2 The International 2018 にて楽しそうにしている観客, Dota2TIチャンネルより]

6. 以上、

「本質」は「人の和」に如かず。定性的な理論ですが、これが本日の主張でした。

ここで、今回の用語の選択に関してご説明です。「本質」に関してはアリストテレスに始まりサルトルが議論に用いている用語を活用すればよかったのですが、「人の和」の方に関してはどのような用語を当てはめれば良いか少し考えました。私も知識は余りございませんので、「天の時・地の利・人の和」(孟子)でお馴染みのこちらの表現を活用しました。

以上、賛同頂ける方は、是非イベントでお会いしましょう。私は普段どのイベントに居るのかツイート等していないのですが、色々出没しておりますので特に関東近辺でお会いできると思います。