恋心は超グリーディ

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Aug 17, 2016 - smash tournament

EVO2016で結果を残した日本スマブラWiiU勢。日本のシーンの秘訣。

総合格闘ゲームの祭典:EVO2016が先月開催されました。エントリー数もEVO9種目の中で2番目というスマブラWiiUはEVO内でも一大イベントであり、生放送の視聴数字でも存在感を見せました。アメリカでは名門のプロチームがスマブラ部門を設立し、シーンが勢いに乗る中、いかにして日本のプレイヤー達がこれに刃向かって太刀打ちし、結果を残したのかにクローズアップしたいです。

何故スマブラ?

「このブログの作者、なぜスマブラWiiUばかり書くの?」と思われる方もいると存じます。複数ゲームタイトルの世界大会である EVO2016 は、9種目あるわけですし、平等に振り返るのがスジではあります。また、普段もブログの内容がスマブラWiiUばかりです。これは、私が馴染んで理解しているシーンがスマブラWiiUだけなので、ご了承ください。

#EVOの結果 これが、EVO2016, スマブラWiiU の結果です。( http://shoryuken.com/2016/07/17/evo-2016-results/ )

  • Ally(カナダ)
  • かめむし(関東)
  • TSM|ZeRo(チリ)
  • CLG|VoiD(アメリカ西海岸)
  • Abadango(関東)
  • らない(関西)
  • dT|Dabuz(アメリカ東海岸)
  • ELV.FAD|Larry Lurr(アメリカ西海岸)

![“EVO2016で結果を残した日本スマブラWiiU勢。日本のシーンの秘訣。”](/images/スクリーンショット 2016-08-17 11.00.36.png) (Robert Paul Photography http://gallery.rmpaul.com/Esports/Evo-2016/Day-2/ )

国際色豊かな結果です。Top8が4国籍というのは、今回のEVOでは最多のバリエーションです。TSM, CLG といったチームは、日本の格闘ゲームシーンでは馴染みが無いと思いますが、アメリカやヨーロッパでは知名度が非常に高く子供にいたるまで広く知られている名門です(この記事でも触れました)。“今時のアメリカ小学生” は、Yankeesを知らない子がいてもCLGを知らない子はいない、くらいの風潮です。dTやELVもCoDなどのFPSで有名なチームで、このゲームへは諸方面から参戦があることがわかると思います。

そんな競争激しい中、日本から3名がTop8へ入賞しました。
「スマブラWiiU」自体は様々なルールで対戦できるよう開発されていますが、EVOルール(1on1, アイテム無し, 2ストック制)で世界を目指す日本勢はこれだけ居るわけです。

環境の違い

給料。ファン。土壌。周囲の理解。練習相手。大会でのコーチやサポート。メディアの注目。多数のフォトグラファーの台頭。(かのRobert Paulも元はスマブラ勢です。Red Bull 記事)様々な面で環境に恵まれたアメリカでのスマブラWiiUシーン。充実度で言えば目を見張るものがあります。他のゲームとの具体的な比較はしませんが、この勢いは破竹です。

こんな世界を相手に、日本勢はいかにして練習環境を築き、結果を出したのでしょうか?

#オンライン
まずスマブラ3DS/WiiU は、「ガチ部屋」という神機能がゲーム内に備わっています。単純なランダムマッチングの対戦システムです。勝率は記憶されており、自分の勝率と近い相手と自動でバシバシ当たるようになっています。このマッチングの早さ!そして人の滞在率。日本という国家の恵まれたインターネットのお陰で、比較的ラグの少ない対戦が可能です。既に恵まれた環境になっています。買った時点で、誰もが上を目指せるのです。
この「ガチ部屋」での勝率は分かり易い指標となっており、Youtuber として実況をしているゲーマーなどは実力をこの数字で表現します。ちなみに60%あれば小学校では校舎最強であり、70%もあれば中高では「すげぇ」と言われる程度になっています。

スマメイト

そんな中、ランダムマッチングでは気が済まない戦闘民族プレイヤーのために、プレイヤー:のちょう氏が開発したサイトが「スマメイト」です。オンラインラダーです。つまりは、ポイント制ランキングサイトです。
(スマメイト) http://sumamate.com/

利用人数を調べようと、プレイヤー検索で「」(空白)を入れました。すると、↓
“ウメブラの配信方法 : XsplitでTwitchへ生配信”
13600 …?? 一ユーザーには真実を確認する術が無いのですが、ユーザーが13000名ほどいるようです。ユーザ主導のサービスが1万以上の競技者を獲得しているのは、タダ事ではありません。上位100名(約3ヶ月毎に更新がある)は「プレイヤーランキング」で表示されるため、上位勢はほっといても名が知れることになります。
この上位勢の名前を、動画サイトで検索することで、プレイヤーは動きをまじまじと見ることが出来ます。世界が広がっていく訳です。

また、この「スマメイト」というサイトは、ツイッターと連動することを義務付けているため、プレイヤーの「顔」がすぐに見られます。強い人の日常や、ゲームに関する議論、様々な側面をツイッターを通じて見ることができます。また、スマメイト内で日記を書くことも可能であり、オンライン/オフラインでの記憶をここに連ねる方も多いです。

「窓」とは Skype グループのことです。スマブラ勢は、主に用いるキャラ(ファイター)毎に、Skypeグループを作って仲間を募集しています。情報共有に非常に適しています。特に、スマブラを始めたものの、どう練習すればいいか分からないプレイヤーにはかなりの情報源になりますし、良い指導環境になります。
そして「窓」同士の対戦もあります。仲間意識を持って対戦出来る身近なイベントであり、モチベの刺激にはかなり働きます。 {% oembed https://www.youtube.com/watch?v=ZjmZWe3lfVY %}
これは最新の窓対抗戦ですね。3DS版ですが、ロボット使いとブラックピット使いが鎬を削る舞台になっています。

タミスマ

「タミスマ」というオンライン大会があります。こちら に動画があります。鮫木さんというプレイヤーが開いています。ツイッターで募集を行い、エントリー出来ます。
オンラインであるため気軽に参加出来るとはいえ、毎回100名以上のエントリーを誇る大会になっており、レベル・注目度共に高いイベントへ発展しています。スマブラX時代の海外勢にとっては「日本のスマブラのオフライン大会を追っていれば十分物知り」というレベルでしたが、今では日本のオンライン大会も知らないといけない程度の広がりを見せています。

情報源

オフライン(大会・プレイヤー)の情報も、最近ではアクセスしやすくなっています。
たとえば格ゲーwikiにも近年は結果がまとめられており、日本・海外プレイヤーを探すことが可能です。
http://fgamers.saikyou.biz/?%E3%82%B9%E3%83%9E%E3%83%96%E3%83%A9WiiU#.V6DL0jmLR0s オフライン大会の結果も格ゲーチェッカーさんがツイートするようになり、オンラインにいながらにしてシーンを追いかけるのは容易になったと言えるでしょう。(ありがたい限りです。ありがとうございます。) {% oembed https://twitter.com/kakuge_checker/status/765077326321160192 %}

導入としてのオンライン、究めとしてのオンライン

誰しも、ゲームを買ってすぐにオフラインの仲間を作るのは至難であることでしょう。故にこうしたオンラインの環境からスマブラのシーンに突入する人は多いですし、物理的隔たりが無い分、入り易い環境であると感じています。かなりレベルの高い競技がこのオンラインで繰り広げられますが、同時に裾野が広い導入環境でもあります。これほどの生態系を独自に作り上げたゲームシーンも、他に中々無いはずです。

#オフライン
今時のゲーム機、家からオンラインで練習出来るのは確かに納得出来ます。しかし、スマブラは御存知の通りゲーセン/アーケードがありません。よく「どうやってコンソールで練習してるの?」と他ゲー勢から訊かれます。スマブラ勢には「宅オフ」という脅威の文化があるのです。

宅オフ

「自宅でのオフ会」の略かと思います。正式に何の略なのかは存じません。スマブラ勢は、DX/WiiU共に、普段はプレイヤーの自宅を開放して、人が集まって練習をします。これを「宅オフ」と呼んでいます。

{% oembed https://twitter.com/takeraketa/status/763653326395236352 %} {% oembed https://twitter.com/takera_taku %}

↑ これは一例ですが、この様にプレイヤーを募集し、トーナメントを開いたりすることもあります。基本は、ゲーセンのように順繰りで対戦しあう練習の方が多数派です。

オフラインを縄張りにする者は、この宅オフに帰属意識があります。

大会「ウメブラ」のウェブサイトでは、宅オフの情報を集めて載せています。情報が古いかもしれませんが、家主のツイッターはいつでも同じなので、結果的に宅オフの情報を集めることが誰でも可能です。
http://piosuma.blog.jp/archives/14906932.html

#大会
そして、オフライン大会があります。これぞスマブラシーンという象徴です。

{% oembed https://twitter.com/Daidai211ssb/status/757483383454699520 %}

特に(自分が関わっているので詳細が書けるのですが)「ウメブラ」では、世界で活躍するプレイヤーを輩出することを意識した大会が行われています。元々はRainさんが主催していた時代、 “海外式!2本先取!ダブルエリミ!” の遺伝子が生まれました。これを継いで関東のスマブラシーンでは、海外式ルール, 生配信, challonge を早くから導入しています。
大会の終局では観客の盛り上げにも取り組み、プレイヤーの皆さんに大会を楽しんでもらうことを考えながらも、より世界で勝てる環境を整える方向も意識して来ました。大会配信でも、ウメブラでは毎回同時視聴2500名にのぼっています。(ちなみにこのうち75%が日本からのアクセスです。)
参加上限である240名のうち、毎回 1/4 - 1/3 の割合を初参加勢が占め、20歳周辺・または大学生の参加が多く、他地域からの遠征も毎回見られます。

{% oembed https://www.youtube.com/watch?v=aRFOo-5dIKA %}

オフラインでは他にもスマバト(大阪)・カリスマ(愛知)・修羅ブラ(福岡)・TSC(仙台)・HST(札幌)といった大会があり [他にもありますよ]、地元のプレイヤー達が独自のシーンを築いています。共通して言えるのは、どの大会でもBYOC(大会で用いるコンソールをプレイヤーが持参する)が実現しており、プレイヤーの協力によって成り立っています。ウメブラ・スマバトにて、毎度のこと40台以上揃うのは脅威としか言いようがないです。

この盛り上がりを見せるオフライン大会ですが、結果を出すと海外での大会のシードに反映されるため、遠征する上位勢にとっては更に油断ならない意義を持っています。(一方で大会自体はオープンエントリーなので、実力で遠慮をせず、どなたでも参加可能ですよ!)

大学

ここまで大会を見てしまうと、新規のプレイヤーさんはどうも尻込みしてしまうのですが、それを補うように、各大学の文化祭でスマブラトーナメントが行われることが昨今増えました。なんの影響からか、競技で用いられるルールが採用されることも多いです。
{% oembed https://twitter.com/yf_17thsumabura/status/764966134860750848 %}

大学の大会はエントリー自由であることが多く、いち早く大会を経験出来る舞台が各自のコミュニティにあるので、また導入ポイントとなっています。

{% oembed https://twitter.com/ssb4tus/status/746882777782444032 %} TUS に関しては、文化祭でなくとも大会していますね…。通例の活動(部活)もあり、他大学のプレイヤーも参加しています。

このように、オフラインでも、導入から究めるポイントまで、段階を踏んでステージがコミュニティにあることが見えると思います。

#きたる2016年8月
2016年8月。アメリカ, ヴァージニア州にて、SuperSmashCon (#SSC) の第2回が開催され、スマブラ64-WiiUまで全4作品の大会が執り行われました。スマブラWiiU部門には1260名のエントリーがあり、日本からもAbadango選手はTop8に進出。安定して遠征で結果を出しています。スマブラ64でもワンゲラー選手5位、クラッパ選手7位。スマブラDXではaMSa選手が9位(惜しくもCLG所属のPewPewU選手に敗れる)結果となりました。(上の格ゲーチェッカーさんのツイートも参照。)

そして下旬。東京にてウメブラの年一大会が実施されます。
{% oembed https://twitter.com/SHI_Gaming/status/764825672661340160 %}

直近の SSC で 1,2,3位でフィニッシュした3プレイヤーが揃って来日。日本を舞台に、大戦が繰り広げられることでしょう。ちなみに昨年の優勝は Nairo です。今年の日本勢は玉座を奪還できるのでしょうか。

#以上

これが日本のスマブラWiiUシーンの概論でした。

日本でesportsと謂うと(アジア全般でも似た傾向がありますが)、トップダウン型になっています。シーンがボトムアップで「皆で盛り上げて、止まらない勢いを作ってしまおう」という意気込みよりも、企業の企画者が天の手を動かして大きな大会をリードする傾向がある、ということです。前者がアメリカ・ヨーロッパ型で、後者がアジア型です(持論)。
そんな中、スマブラWiiUは日本にてボトムアップで盛り上げている珍しいシーンだと感じています。ファンとしてはこれからも勢力を維持して、海外と張り合って欲しいです。

ウメブラの配信方法 : XsplitでTwitchへ生配信 iOSからTwitchへ配信

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