恋心は超グリーディ

普段質問されることを文章起こした場所です。ライブ配信やゲームイベントにまつわるものです。もしくは、たまに筆者の趣味の文章が交じります。

Feb 25, 2018 -

G5 第2章

Genesis5 旅日記の第2章。大会初日についてである。

バーガーキング

時差ボケに苦しめられ、暁闇の中、自ずと目が覚めた。部屋のデジタル置き時計は、6時を指している。床前に腰掛けると、目も慣れぬ暗い部屋の中、各位がスマホをいじって画面が明るく光っていた。目が冴えてしまったため、LINEグループでメンバーを呼びかけ、我々は近くのバーガーキングへ出かけた。メンバーを呼びかけたのは勿論、治安が穏やかでないからである。

オークランドの朝は静寂としていた。車通りが少なく、歩行者も少なかった。閑静な通りの様子に違和感覚えたのは、信号毎に物乞いが銭を求めて来たところからである:

「小銭持ってない?」

補綻した衣服は、英語を話さぬメンバーにまで、言わんとする事を伝えた。一行はそそくさと過ぎ、バーガーキングを目指した。路傍の落書きは精巧を極めており、どこからツッコめば良いかわからなかった。

“代替メッセージ”
[朝のオークランドは静か]

朝7時のバーガーキングは比較的空席が目立ち、英語に不慣れな一団も遠慮なくゆっくり注文できた。しかし、店内であろうとやはり諸ホームレスがコップに小銭を入れてジャラジャラ鳴らし

「小銭持ってない?」

と終始せがんで来る。こういった人物が朝から2名ほど店内をたむろしており、アメリカの中でも他地域とは一線を画すところを思い知った。列に並ぶ時間が億劫に感じ、一刻も早くこの場を立ち去りたかった。

“代替メッセージ”
[持ち帰ったバーガー]

小銭をせがむ老人は、永訣するに忍びず。されど忍ぶに及ばず。一行はバーガーを持ち帰って部屋で食んだ。

スプラトゥーン2

朝9時半。
混んでいるエレベーターを降り、昨日下見をした会場へすぐに入った。

“代替メッセージ”
[会場の様子]

空洞にこだまを響かせていた昨日とは異なり、戦意に充ち満ちた「会場」が広がっていた。今回のエントリーは2000人超。ちなみにスマブラWiiUのエントリー数はかなり落ち込んだ。これについては、昨年の Genesis4旅日記 を読み返して下されば恐らく納得いただけるだろう。スマブラの大会は、年間で大規模なモノでも多数開催されており、実力を試す場には事欠かない。大会は常に他の大会と比較され、魅力で劣れば来年の客は減ると思って良い。

筆者は初日にスマブラ試合が無く、おまけにエントリーしておいたSplatoon2の予選が始まろうとしていた。これが思わぬ収穫となった。

“代替メッセージ”
[左から Tacoman, Ayuha, Atsushi, Brood]

Splatoon2 のオフライン大会というものを、私は異国のこの地で初めて見た。
Genesis5 は、言わずもがなスマブラシリーズをメインとした大会である。しかし別種目も幾つか用意されており、スプラトゥーン2はその一つであった。100名がエントリーしており、それをスイスドロー形式で予選進行するだけの設備が備えられていた。40台のモニターと、Switchドック。そして、ゲーム音に加えプレイヤー同士のコミュニケーションを可能とするオーディオ機器。自分の知識に無い大会用機器を見たことが久々だったため、刺激になった。セッティングの詳細は、以下の別ページにまとめて記した。

『海外スプラトゥーン2 オフ大会設定方法』

“代替メッセージ”
[Splatoon2 コーナー]

自分の試合の結果はと謂うと、惨憺たるものがあった。今回のスプラトゥーン2部門は、基本的に4人セットのS+しか出場しておらず、急造の兵卒部隊では限度があった。結果全敗。それでも、海外大会にてスマブラ以外のタイトルに出場したのは初めてであった気がする。自分でもよく覚えていない。

“代替メッセージ”
[2試合を終えて深刻な表情になるメンバー:Atsushi, Takoman, Brood]

Splatoon2エリアにて、出場していた DC(色んなNintendoタイトルを実況する人)やFOWとも会話が出来たことであるし、運営をしている EndGameTV とも様々な会話が出来た。今も EndGameTV とはコミュニケーションが続いている。やはり大会はどんなものであれ(海外のみならず国内も)、機会が諸星の如く偏在している。

“代替メッセージ”
“代替メッセージ”
[ネス使い:FOW も Splatoon2 に出場していた]

スマブラ

スプラトゥーン2の予選が終わってのちは、暫く遊んだ。会場でたむろしている友達と恒例の挨拶を交わした。

“代替メッセージ”
[ESAM, Nintendo of America 3名, MVD。前列筆者。]

“代替メッセージ”
[MkLeo, Mr.R, Ally]

この1年間で、プレイヤー達にも様々な変化があった。先ずMkLeoは顕著である。メキシコで2001年1月に生まれたため、諸ルールにより2016年12月が初めてのアメリカ遠征であった。そこからEchoFoxのスポンサーを得て、アメリカに定期的に足を運べるようになった。日本にも KSB, ウメブラJapanMajor で来日した。昨年の堂々たるGenesis優勝から始まり、年間サーキットの2GGCも優勝にも至る、現在最強プレイヤーの本命である。
オランダの Mr.R はアメリカに定住し、独自に生きる道を始めた。Ally は大規模大会 Civil War 後にレーシック手術を受け、一時ブランクがあった。

大会の運営

もはや日本のスマブラ勢にとって、海外大会は行けば当然のように在るモノとして甘受されるようになった。私もこうして毎年遠征し、プレイヤーや運営の皆さんと直接言葉を交わすことが出来る。しかし、このゲーム環境と人の輪を形成するは易いことでは無い。

Genesis の開催には、準備日 + Day1-2 で2000 - 3000万円かかる。(Day3は別腹。)具体的に値段を訊いた訳ではないが、アメリカのイベントの統計からこのくらいのオーダーであると推測したと賢明な読者の皆様は思って欲しい。ウメブラ(註:ウメブラは東京で開催されているスマブラ4のオフ大会。)は毎回異なるが N十万円かかることを踏まえると、予算も規模も勢いも100倍という体感は経験に則する。

ではGenesisは参加者数がウメブラの100倍かと問われれば、そうではない。ウメブラは通例版で約300名(観戦者込)を集めているが、Genesisの参加者は2000名強である。ここから言える事は「参加費モデルでは大会は拡大しない」ということである。

日本では慣例として、大会運営で利益を出さない。つまり “参加費” とは日本では、大会の運営にかかる費用を参加者で分担している形になっている。しかし参加者が増えたら広い会場の費用を賄えるわけではない。ここは一種のマルサスの法則のようになっている。まず “参加費” は参加者の人数に対し線形に増えていく。次に会場費は面積に比例して増加するが、これは参加者数の2乗に比例すると近似できる。よって、人数の2乗で増加する会場費を、人数に比例する “参加費” で賄うことは出来ないのである。
具体例で考えてみる。240人の大会であれば会場費が1日15-25万円であるが、1000人規模の大会を開くとなれば1日の会場費だけで250万円はかかってしまう。(実際は双方、これに会場備品貸出・空調・時間延長料金・車代・機材修理費 …等などが加算される。)

そのため、Genesis を始めとしたアメリカのゲーム大会は、ゲーム発売元の公認大会でなくとも大きめのスポンサーを金銭でつけているし、現地に企業のブース出展もある。(この辺は国の文化の差はあることを理解すべし。)エントリー料も高い。東京ではゲームイベントの参加費は一般的に2000円前後であるのに対し、アメリカでは入場だけで50ドル〜70ドル、1種目の出場に10〜15ドル程度である。これを踏まえて、例えばGenesisで計算すると、合計エントリー料では1500万円〜ほどの収入に留まるため、概ね500-1000万円をスポンサー料で埋める必要が有る。
「利益」の文化は大会運営以外にも関係がある。入場料ビジネス以外にも、大会ではゲーム機や周辺機器の用意・大会進行受付のスペシャリスト・配信一式といったサービスが必要である。アメリカでは是等を生業とする中小企業ベンチャーが生まれやすいため、Genesis規模の大会を開催したいとなったら、安価で気軽に召喚出来るのである。文化の差は、ここまで差を生ず。

自分の手で大会を、ひいてはシーンを毎日運営する気概は、いつでも見習うべき所がある。

“代替メッセージ”
[会場の様子]

大会会場では様々な思惑が飛び交う。スマブラの会場には、常に一流〜三流のesportsチーム関係者が歩き周り、知り合いのスマブラ勢に案内されながら常に獲物に目を光らせている。あわよくば選手を採用したいのである。他にも、ブース出展者はグッズを売っているし、メディア入場して選手・運営・全体を撮影している者も居る。この頃 Vayseth は、そそくさとドキュメンタリー『Vayseth Voyage』の収録を進めていた。
自主的に意志を通さねば、行動は生まれないのである。

“代替メッセージ”
[予選:Matcha vs Pink Fresh]

初日のゆくえ

“代替メッセージ”

スマブラ4 はエントリー総数が少なかったこともあり(それでも700名程度)、20時頃には予選が全て終了した。アメリカとしては異例のスケジュール遵守である。この日はスマブラDXも予選のみ。時間はかかったが、驚天動地の波乱は起こすことなく順調に事を進めた。

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一方、スマブラ64にてエキシビションの「コンボコンテスト」が開催されていた。大規模大会ではすっかり恒例となったこのイベントは、上記動画をご覧いただければ一目瞭然である。自分で考案したコンボを人前で見せて、審査員に採点して貰う方式である。コンボにアドリブの要素が発生する(註:「コンボ」は適切な表現ではない可能性があります)スマブラには打ってつけのイベントである。

初日は、大会全体としても温和な夜を迎えようとしていた。流石にアメリカ人でも、初日から酒宴を開いたりはしない。おやすみ、また明日。

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