恋心は超グリーディ

普段質問されることを文章起こした場所です。ライブ配信やゲームイベントにまつわるものです。もしくは、たまに筆者の趣味の文章が交じります。

Apr 22, 2020 - esports gamerlogy

“Esports後進国理論” の起源

なぜ人は私に会うと「日本は esports 遅れてるんでしょ?」と訊ねるのでしょうか。その秘密と実態について考えてみることにしました。

はじめに、筆者は「esports を盛り上げたい人」ではありません。筆者は主にスマブラのオフ大会の運営をしており、他の「ユーザー主催のオフ大会」に行くことが好きです。ただ他の業界の方々(例:音楽・食品・出版・自治体など)の前に出れば、あちらからすれば筆者は「esports の人」として扱われることは致し方ないことです。そんな時「日本は esports 後進国なんですか?」と訊かれることが多いです。ゲーマー根性としては使用キャラを批判されたようで、反論することになります。このご質問を私生活で訊かれることが多いため、文章でご返答をまとめておくことにしました。

内容は日本で esports について、それも充分にゲームの二次産業の実態までを見て、「後進国」の理論がどこから生じたのか述べます。断っておきたいのは、日頃から筆者は「日本ではesportsが盛り上がっている」と主張しています。遅れている・盛り上がっていないという主張は的外れだと考えています。

※用語:ゲーム会社・企業は同じ側の言葉で、ユーザー・コミュニティは同じ側です。企業・ユーザーは対立する概念です。グローバルと世界は同じ意味です。
※今回登場するゲームタイトルおよび大会名がだいたい略称ですがご了承下さい。おそらく、聡明なゲーマーの皆様であれば馴染み深い名称かと存じます。

日本 esports の現状

「日本でesportsが盛り上がっていない」をなるべく普遍性のある範囲で議論しましょう。広義の定義に則るのであれば、「日本の esports が及ばない」の意味は「ゲームの二次産業が及ばない」かを見ておけば足りるはずです。そのため、ゲームタイトルや 大会/ストリーマー を通してチェックしていければと思います。

日本の esports ひいてはゲームの二次産業が及ばない原因には:

  • 日本では伝統的に国産のゲームが流行っていた
  • 日本のゲーム会社が権利に厳しい

といった点があると考えられがちですが、それは早計であると考えています。筆者は所詮GAFAの犬をやっている文弱の徒ですが、グローバルのデータと温度感はなんとなく見ております。それに則れば、日本は世界一般から比べて決して見劣りする国ではありません。

その「盛り上がり」に関係がありそうな統計を、部分的に恣意的に選んだものですが、見て行きます。(断っておきますが個人が勝手に作ったグラフですので気合を入れたそのスジの方が、しかるべき時に引用するに足るものかは保証しません。)前提として盛り上がりは絶対評価ではなく、海外の esports と比べて日本のそれの相対評価となります。まずはゲーム市場全体についてです。

“代替メッセージ”
[図1. 世界ゲーム市場と日本: 世界ゲーム市場, Newzoo ; 日本国内消費, ファミ通 ; 一人あたりの支出額, iPhone Mania ; ネットトラフィック, Similar Web

というわけで日本はゲーム市場の13%です。世界の人口がちょうど77億7777万7777名を突破したと今月話題になっていました。人口1億の国がここまで活躍しているのは大健闘だと考えます。日本のGDPは世界の5%程度( IMF より)で、それを超越していますから、GDP比率でも活躍しています。それでは、これに対して日本の esports でのプレゼンスはいかがでしょう。

“代替メッセージ”
[図2. 世界esports市場と日本: 世界, Newzoo ; 国内, KADOKAWA Game Linkage

日本は esports では 0.6% でした。このようであり、ゲーム全体やGDPに比べると見劣りします。海外市場ですと競技にまつわるゲーム内課金が統計に入っていますが、日本のゲームがこちらを余り実装していないのが弱いかもしれませんし、実装しているタイトルでもこの統計に入っていないかもしれません。そして日本ユーザーが LoL や CS:GO で課金している量がカウントされているかも不明です。そのため善戦の余地はありますが、依然見劣りします。

続いて、ゲームカテゴリのライブ配信視聴時間を見ます。ネット上で、日本のユーザーはどれほどゲームに関すること(ゲームの二次制作コンテンツ)を視ているでしょうか。

“代替メッセージ”
[図3. ライブ配信ゲームカテゴリ視聴時間, 全て単位は分, MWとは視聴分数のこと: 世界, Streamlabs/Newzoo ; 日本, 配信技研

視聴時間では日本は8%です。Esports がゲームの二次産業全体を指しているという立場の基にこのグラフを見ました。これは人口, GDPと比較しても健闘していると言えます。註釈にあるように中国での視聴時間統計が見つからないため実際はより割合が落ちるのですが、それでもオーダーとして充分な位置につけています。人のエンゲージメントだけを見ると日本はかなり esports が “盛り上がっている” 要素があります。

それでは、大会の視聴時間のみを比較するといかがでしょうか?

“代替メッセージ”
[図4. 大会視聴時間: 世界, Newzoo ; 日本, 配信技研 Giken Access]

大会視聴時間では0.8%です。このように日本のプレゼンスは下がります。

グローバルではライブ配信のうち「大会の視聴時間は全体の15%程度」と言われます。計算しますと、日本では「大会の視聴時間はゲームライブ配信全体の1%程度」ということになります。
国際水準と比較すると日本では大会よりもストリーマー/実況者といったコンテンツがエンゲージメント高いという結果です。他の国と比べると「日本はゲームの二次コンテンツの中では大会に興味がない人が多いのかな」と見受けられますが、単純に「大会の配信時間」が足りない可能性があります。日本にはプレイヤーは足りていても大会の頻度が足りない可能性があるということです。こちらは公開情報で比較できるものがないため、ここでの議論は割愛します。どうか思考実験に留めて下さい。

続いて、賞金額を比べます。視覚情報は用意しませんが、有名な Esports Earnings というサイトに情報がまとまっています。筆者は賞金で議論をするのは余り好きではありません。賞金はエンゲージメントの終着点であるべきで、賞金先行で出来事を考慮したくないからです。その上で、身勝手ながら申し上げます。2020年4月現在、合計賞金は400億円くらい出ています。そのうち日本は1位Feg選手 1億円, 2位Tokido選手 5000万円 です。丸く見積もって賞金での日本のプレゼンスは 0.4% ほどです。
ただ、上記ウェブサイトをご覧頂くと一目瞭然ですが、賞金は Dota2 があるかどうかに大きく依存している部分があります。Dota2 が好きな筆者としては日本が当ゲームで未だ Major 進出の活躍をしていないのは惜しい所ですが、議論としては「賞金額」とは全体の1標本に依存していることをご留意ください。(また勝手ながら、筆者に対して賞金額の優劣で国ひいては大会の優劣を語られる方は、どうか Dota2 を一度楽しんで頂ければと存じます。)

統計を並べるのはここまでです。

日本はゲーム売上と比べると esports は物足りません。ですが決して悲観するものではありません。日本は競技タイトルに多様性があり、日本独自の大会があります。そこは以下日本の Esports Tier List の画像・および記事をご覧頂いてもご理解頂けるかと存じます:

“代替メッセージ”
[Esports Tiers in Japan 2019, 配信技研

年間で大会の視聴時間が 100 million [min] を超えるタイトルが5つ有り、其々にプロプレイヤーが並び立っているのは市場として高いロバスト性があります。さながら、日本の経済全体のようです。ライブ配信の視聴時間を見れば、様々なストリーマーが活躍しており、他国に遜色ない視聴時間が生産されています。賞金という要素は Dota2 に依存するところが大きいですが、「日本では賞金が少ない = 日本の全てが駄目」という訳ではありません。これらを総じて鑑みるに、日本の esports はそこそこ頑張っているという評価が筆者の思うところです。ここは感情論ですが、探せば統計が出てくる時点である程度発展していると考えています。国別に探すと見つかりづらい場所があることも事実で、そういう場合は社内の者に訊かねばなりません。(角川系列のみなさん, 4Gamerさん, Negitaku さん本当にありがとうございます。)

それでは、いつ「後進国」の理論が登場したのでしょうか。
思い浮かんでくる説は、初期の「後進国」仕掛け人たちが、日本の non endemic な大企業・行政に火をつけるためにわざとこのイメージを発信した、といったことです。まあ原因につきましては、今日は下で論じましょう。

Esports 後進国理論の起源

Esports 後進国理論を人が信じてしまうその根底には何が有るのでしょう。

「日本は esports 後進国」という発言で最も古いものは、2007 年に見つかります( CNET さん記事 )。Counter-Strike プレイヤーによるものです。

しかし、この時代は「StarCraft, Counter-Strike のことだけを esports と呼ぶ」という背景があったことに留意する必要があります。

※追記 : なぜ当時は上記2タイトルだけを esports と呼んだのかについては、こちらの筆者の投稿から→ 主観 Esports の歴史

時代は少し飛び、続いて「esports 後進国」理論が定期的に出始めたのが2011年に観測されます。Google Trend には表示できるデータがありませんでした。そこで Twitter で「eスポーツ 後進国」と検索すると、最古のもので2011年周辺のものが見つかります:

往時のツイートから特定の一つを挙げることは忍びないですがご容赦下さい。また、上記の方々が持つ主義主張への抗議ではありません。申し上げたかった点は、この頃なぜ esports 後進国 が叫ばれ始めたのかです。2011年は、Dota2 によって賞金1億円が発表され、賞金の価値観が塗り替わった年です。この大会名 “The International” から取ってこの衝撃を「TIショック」と呼ぶことにしましょう。(これは筆者の独断です。)

この2011年はキセキの世代で、Dota2, LoL, CS:GO が正式リリースまたはベータ導入されており、Twitch がローンチしています。

LoL, Dota2 の国際大会で日本は 2011-2012 あたりに出席していませんでしたので、日本が「esports 後進国」という言い方をしても何も矛盾はありません。StarCraft2, LoL, Dota2 あたりしか esports とは呼んでいませんでしたから。

[「TI ショック」が視えるドキュメンタリー 『Free to Play』 , 日本語字幕もあります]

日本での「esports 後進国理論」は、2011年「TI ショック」を受けて、再び掘り返されました。2011年より前であれば賞金以外ではそこまで悲観するほどの差が観測されていないからです。

そして、筆者の見解では2013年以降に「LoL や Dota2 に限らず、どのゲームも esports を名告る」というトレンドが到来します。 今は「esports 後進国」と聴くと、「日本ではどのゲームも盛り上がっていない」という極端な捉え方をする方も多いでしょう。しかし、それは時代が生んだ言葉のアヤです。

※追記 : 2013年にどのゲームも esports を名告りはじめた経緯は、同様にこちらから→ 主観 Esports の歴史

つまり、2007年当時は「esports 後進国」意味は異なったものの、2011-2013年に esports がより広い意味を指すようになったにも拘らず、「esports 後進国」という単語を意図的に用いた方々がいらっしゃる、というのが筆者の見解です。

こうすると何が良いのでしょう?その方が資金が集まります。省庁や権威組織、または日本を代表するような企業には、「日本は esports で潤っています」と言うよりは「日本は後進国だから力を下さい」と言った方が巨額のスポンサー料や補助金が得られやすかったりします(これは主観です)。そのため、ゲーマーには不本意でもこうした用語を使っている方も多いと思います。
現に、学生の方や企業の方で:

日本はまだまだ esports 後進国。だから盛り上げないと!

という趣旨でプレゼンをされた方・資料を作った方はいらっしゃるでしょう。そうした方々は、全てこの「esports 後進国理論」が有ったほうが得をする方々ということです。

盛り上がっていないから大義名分が出来てありがたい方が居た。その方々が、昔の文言を利用した …というのが筆者の主張であります。

想定される反論

百歩譲って日本 esports 後進国理論が存在するとします。では後進国である理由として挙がる理由は、大別して以下の3つに分けられます(筆者説):

  • ① 日本のゲーム会社が消極的だった
  • ② 景表法・賭博法で賞金が出せなかった(2019年 解決済み)
  • ③ 日本ではゲームが受け入れられていない

其々、どのように筆者が認識しているか述べます。

② について、賞金だけの話で言えば、2010年までは世界でもあったとしても500万円程度でした。ほぼ5人で山分けとなるため1人あたり100万円であり、これが世界の頂点でした。日本代表はWCGに出席していましたし、空気感はそこまで日本海外で差がなかったはずです。(明確な温度差がもしあった場合、申し訳ないです。)先程の Esports Earnings ページでも、2010以前は CPL2005 や WCG2007 の500万円前後が優勝賞金としては最大となっています。

確かにユーザーが主催する大会で賞金が出しづらかったのはごもっともですが、ここで述べたいのは一人あたり数十万円ほどの賞金であれば日本でも出ていたということです( Negitaku の履歴より)。

また、③「日本では社会的にゲームは受け入れられていないが欧米では違う」につきましては、認識が誤りです。筆者がそもそもサンフランシスコの会社務めなので感覚的に捉えているのですが、アメリカでも「どのようにゲームを受け容れてもらうか」は議題になります。欧州では IOC バッハ会長が:

We cannot have in the Olympic program a game which is promoting violence or discrimination, “So-called killer games. They, from our point of view, are contradictory to the Olympic values and cannot therefore be accepted.

要するに「オリンピックとFPSのような暴力的なゲームは価値観が相いれない」( 日本語記事 Gigazine )と発言しており、欧米ではなんでもかんでもゲームが受容されている訳ではないことが見えます。ゲームが人間に良いことが社会的に自明であれば、 ハーバード大学(Kutner ら) は「暴力的ゲームは子どもに影響なし」という著作を出す必要などない筈です。欧州で Silver Snipers を組織する必要もないでしょう。寧ろ日本こそ『Pokémon GO』で大きな収益を出しており、壮年〜高齢者層にゲームが受け入れられている土壌が有るのではないでしょうか。昨今話題の条例を代表とし、一部の大人には理解が得られていない現状はあるでしょうが、コーナーケースを挙げても風潮/土壌全体の証明にはならないと存じます。

そのため今日は議論を絞るために様々な可能性を網羅しましたが、残った ①「日本のゲーム会社が消極的だったのか」に対して反論を述べます。

日本のゲーム会社は esports に消極的だったのか

結論は日本のゲーム会社は esports に積極的だったと考えています。

“Esports” に積極的という意識がゲーム会社側にも無いと思いますが、「大会を開くこと」に積極的だったかを見ると、2011年以前を見ても全体的に積極的だったと考えます。
CDI坂本さんのこちらの資料 にもありますが、海外のゲーム会社に比べて日本のゲーム会社のビジネスモデルが適していなかったということも事実です。それでも日本のゲーム会社は 公式/公認 の大会をプロモーションの一環として開いて来ました(例:闘劇, ガンダムVSシリーズ, ポケモン …etc)。海外タイトルも日本で国際戦の予選が開催されて来ました。(上記 WCG, ESWC や CoD シリーズ, AVA等。 Negitaku 大会レポートに詳しい。)
プレイされているゲームタイトルによっては「運営に不備がある大会ばっかりだった」と感想を持たれている方もいらっしゃるかと思いますが、大会の完成度の優劣と積極性はまた別軸です。

なぜ「日本のゲーム会社が消極的だったのか」について反論したいかと申しますと、これに反論することで「日本のユーザーが消極的だった」と述べたいからです。
方向性としては日本のユーザーはゲームプレイには積極的なものの、ゲーム外で能動的に働きかけることに消極的であると考えています。勿論上で見たように動画を作ったりライブ配信する方は多いのですが「誰かが見に来る待ち」であることが多く、 “リア友” にDMして「これ作ったから見て」といった働きかけが少ない(そういった方もいらっしゃいますが傾向として少なめ)という意味です。そのため、以下「消極的」と申し上げた場合はこういった趣旨です。

日本のユーザーが消極的

断片的になりますが、日本のユーザーが消極的であると思い始めた端を挙げます。

例えば布教する勢いです。

日米でイベントに参加して日本ユーザーの行動を比較すると、漠然と消極的と感じます。この違和感を断片的に数値で比較しましょう。2020年1月24-26日という同じ日程で日米にて開かれたイベントがあります。その Google Trend を global で取りました。EVO Japan と Genesis です。

“代替メッセージ”
[図5. EVO Japan 2020(日本)と Genesis7(アメリカ)の Google Trend]

Google Trend では、2つのイベントを比較すると Genesis7 の方が少し高めになっています。この2イベントですが、共に3日間、複数タイトルが集まるオープントーナメントでした。種目は『スマブラSP』だけは共通しています。エントリー人数を比較すると:

  • EVO Japan 2020 (日本)参加者数:約6000
  • Genesis7 (アメリカ)参加者数 : 約3500

(いずれも被りなしユニーク)でした。比較するにはうってつけの素材です。

参加者数は日本の EVO Japan の方が大きいにも拘らず、図5. で見たようにネット上での投稿・検索の差があります。これが、今回申し上げている参加者の「積極性」の差かと考えています。参加者・観戦者がいかに自主的に拡散したかの差という意味です。

例えばオフ大会を開いている運営ユーザーも、どれほどのリア友をゲームの大会に呼んだでしょうか。ここが差に繋がっているのではないでしょうか。上で具体例に出した「自分の作った動画をリア友に宣伝しない」という傾向も、職業で他国と比較しての体感です。ウェブサイト外の行動なのでトラッキングできている訳ではないのですが、日本としての傾向はこう感じています。

そもそも「盛り上がる」の主語/主体はゲーマーであるため、盛り上がっていないのだとしたらそれはゲーマー側に責任の主体があるはずです。 このように挑戦的な内容を申し上げるのも恐縮ですので、賛同頂けなければどうかここで踵を返して頂ければと存じます。数値的なものは既にここより上で述べました。ここから先は更に提案となります。

ユーザーが積極的とは

そのため、日本の esports は既に盛り上がっているという上で、漠然と物足りない部分は ①②③ に非ず、「ゲーマーの自主性」だと不徳ながら筆者は考えています。このパーツが揃った時、「日本は後進国ではないはず」という意見に賛同頂けるようになるのではないでしょうか。

ここでいう ユーザー = ゲーマー は広く意味しています。それはゲーム会社ではなく、スポンサー企業ではなく、プロプレイヤーとも少し異なる存在です。ユーザーはゲームの消費者であり、イベントの参加者であり、時にコミュニティイベントを主催する運営(たいてい非営利)にもなる立場の人間です。

「日本のゲーマーは消極的だったから滅べ」と申し上げたい訳ではありません。自主性がないのも「自主性がないから」「指示待ち人間だから」という訳ではございません。「積極的になることが出来る」という選択肢を知って頂きたいです。今はゲーマーが積極的になれるという発想が在野に横たわっていないのかと考えます。 ゲーマーはプレイヤーに徹するだけでなく、自分でもオーガナイザーになる可能性があります。自分のゲーマーとしてのブランドを育てることも出来ます。「自分は弱いから」「貢献するほどの人物じゃないから」と遠慮する必要はなく、自分がやることによってより偉大な人物もやり易くなる・他者のハードルを下げることができる明確な利点があります。

「大会は開いた」という方も多いと思いますが、開いたイベントを時間をかけて大きくしていく、なにか積み上げていくイメージが湧きづらいのかと思います。個人の social media のアカウントについても同様で、Twitter のアカウントを通じて個人のブランドを成長させるという意識がゲーマーに有るでしょうか。ブランドは成長させて良いものです。(たまにこう述べると「好きにやってるんだから成長を押し付けるな」と主張される方がいらっしゃるのですが、それも自由だと思っています。好きにやることを維持してなにもしないことも自由ですが、成長させたい人が成長する自由もあります。)

具体的にどう出来るか、想像を以下に述べます。筆者はそこまでユーザーという大勢を導けるような大層な立場ではありませんので、少しでも読者の方が筆者の曖昧で竹細工な主張を理解されるのに輔けになればと存じます。

上述図3, 4.のところで、日本にはプレイヤーが足りているが大会が足りていない可能性について触れました。それに関しては筆者が過去に 『コミュニティ大会運営をする時に考えていること2020』 を記しました。今回ユーザーが積極的に大会を開いて欲しいという方向については、こちらの内容を参考にして頂ければと思います。

結論

今回の内容を総括しますと、日本の esports は、ゲームの二次産業全体で捉えても、数字上盛り上がっています。ただ百歩譲って「日本 esports 後進国理論」があるとした場合、その起源は2007年に違う意味で「後進国」と言っていたことにはじまり、「TIショック」以降にこれを利用した後世の方々による人為的なものでした。

元来「盛り上がる」主体はゲーマー(企業の対)です。盛り上がりの舞台を作るのは大会運営であり、盛り上がるきっかけを作るのはプレイヤーですが、飛び上がって喜んだりその様子を拡散するのは参加者や視聴者です。主体である「ゲーマー」の積極性が欠けていたのでブランドの成長が比較的少なかったことが日本の esports に漠然と足りなかったパーツかと思っています。

この漫然とした不安を「日本は法律のせいで後進国」「ゲーム会社のせいで後進国」と理由づけてくれたことに安心して飛びついてしまったことが、日本後進国理論の現状かと思いました。今日はこれで結論づけます。

以上

日本でもゲーマーとしてイベントを始めたことが高じて企業に至ったケースも日本にはあります。例えば TOPANGA リーグ, JCG, C4LAN, WellPlayed リーグ …etcです。ただ指摘をいたしますと、こちらは全て「TI ショック」以降に興ったブランドです。其々のルーツは TGN であったり古い起源があるのですが、ブランドの名前が2011年以降ということです。今回ゲーマーがブランドを成長させる話題を出しましたが、その点では「日本 esports 後進国理論」は2011年の「TI ショック」とほぼ同時期に旗を揚げました。この「後進国理論」もブランドを成長させて来たのだと見受けられます。この理論が現れて広がってしまった上で先のイベント群がありますので、後進国理論を止めるという役割に関してだけ云うと手遅れだった可能性があります。
振り返ると、「日本 esports 後進国」理論を最初に標榜された方々の動き出しの早さは目を見張るものがあります。これはもはや後進国理論の提言者の頑張りを讃えるしかありません。

今回の内容は前衛的であり挑戦的であったと自覚しています。しかしはじめにも述べたように、私生活で訊かれる質問に対し答えを用意しておきたかったため準備いたしました。ツッコミは甘受し、今後のご回答にも活かそうと考えています。どうかお寄せ下さい。