アメリカ;オークランドにて開催された Genesis5 という大会でスプラトゥーン2大会にエントリーしてきました。大会のセッティングを拝見したので技術を共有します。
Genesis とは
Genesis はスマブラシリーズの大規模大会です。毎年2000名以上が世界から集まるオープントーナメント型のオフラインイベントで、いつもアメリカ:カリフォルニア州にて開催されます。スマブラ64, DX, WiiU を中心に、サイドイベントも開催されます。今回はサイドイベントでスプラトゥーン2部門がありましたので出場してきました。
筆者はスマブラ勢なので、毎年この時期(1月)に開催されるスマブラ大会に遠征していまして、その記録が上記URLにございます。今は隠居したスタッフの身なので、海外プレイヤー・アメリカでのスマブラ大会運営との交流、そして自分の努めるTwitch本社への訪問が旅の中心です。今回気まぐれにエントリーしたスプラトゥーン2部門で色々発見したため、いつものスマブラ旅日記とは記録しておこうと思いました。
{% oembed https://twitter.com/Genesis_Smash/status/954141356410089472 %}
このGenesisは、ゲーマーが運営している大会なのですが、Nintendo of America 公式パートナーの大会であり、実質アメリカの公式大会に当たります。(道理でスプラ2の対戦相手が強かったと思いました。)
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https://twitter.com/NintendoVS/status/954783442423590912
%}
[Nintendo USA のツイッターにイカ姿を撮影された筆者]
ちなみに私は日本で行われている大会のルールについてなにも存じ上げません。説明に関してはかなり丁寧に冗長にしたため、分かった方は適宜読み飛ばしてください。
[大会景色]
ルール
わざわざ読まれる方は先ずこれが気になると思います。こちらです↓
https://drive.google.com/file/d/1NgahlCSm4zsZqXrQT5nBr64G9L8Cg4dc/view
箇条書きすると、
- 予選をブロック分けする
- 予選はスイスドロー形式
- 各試合は全て3本先取(Best of 5)
- 上位が本戦出場確定, 中位が第2予選へ
- こうして選抜された12チームが本戦トーナメントへ
- 予選・第2予選・本戦全てに於いて、ルール/ステージが事前に決まっている
です。特に一番下「事前に決まっている」ルールに関しては、例えば予選では:
初戦は一番左列「Swiss Round 1」です。1戦目に “RM Humpback Pump Track” (= ガチホコ コンブトラック) を行います。
2戦目は “CB Inkblot Art Academy” (= ガチアサリ 美術大学) です。同様にして、3戦目は “SZ Kelp Dome” (= ガチエリア モズク農園) です。
この時点で3戦しましたので、ゲームカウントが3-0になればここで試合終了です。しかし決着が着いていなければ4戦目、同様にして5戦目も行います。4戦目は “TC Starfish Mainstage” (= ガチヤグラ 音楽堂)、5戦目は “RM Port Mackerel” (= ガチホコ ホッケふ頭) です。
予選2戦目は2列目(Swiss Round 2)、3戦目は3列目(Swiss Round 3)…etc のように順次試合を進行して行きます。当たる相手はスイスドロー形式です。第2予選・本戦もこのように事前に ルール/ステージ が決まっており、方式まんべんなく試合を行うようになっています。試合間にブキ・服を替えることは可能でした。
スイスドロー形式の管理は、Smash.gg にて行われていました。(Smash.gg こんなことも出来るのか…)
(ステージ一覧英語名は こちらの海外Wiki からどうぞ)
行程
Genesis5 では2日間をかけてスプラトゥーン2を行いました。前提として、こういったオープン形式のゲーム大会はホテルを貸し切って行うため、参加者は皆このホテルに宿泊しており、2日間以上の開催が普通です。この大会はオフライン大会であり、オープン形式ですので、来さえすれば誰でもエントリー出来ます(事前エントリー制)。
1日目。2時間位で上記スイスドロー5戦が終わります。予選AブロックとBブロックに分けて、約30チームを消化しました。ここまでで休憩含め5時間ほど。第2予選がトーナメント形式ですが、3時間くらいで終結します。
2日目は本戦です。12チームのトーナメントでした。その前におまけで Amateur Bracket が行われました。これは予選落ちしたチームのみが出られるトーナメントで、スマブラ界では「Bクラス」と呼ばれたりしているアレです。
進行
朝10時に会場スプラトゥーン受付に集合し、チームリーダーが呼び出されます。「どこチーム対どこチーム」が宣言され、各セクションに各自で行きます。試合が終わると、勝ったチームが結果を受付に言いに行きます。
誰が決めたの?
EndGameTV という団体が運営しています。オンライン大会もやっていますので、日頃からこのルールでアメリカ標準になっているようです。この「EndGameTV標準ルール」は秘伝という訳ではないのですが、出場者にしか共有されていないため日本で余りお目にかかることはありませんでした。
EndGameTV が開催した試合やそうでない試合も、Splat Stats にて戦績がまとめられ、オン・オフ大会でのシード順を決めています。同じ人が運営していました。 https://twitter.com/SplatStats
大会をするに当たっては「シード」という概念は凄く重要で、これに関しては 別記事で述べます 。
設営
つづいて設営です。大会会場には:
- Asus モニタ 40台
- Astro ヘッドセット 各台
- プロジェクタとスクリーン 1つ
- 配信セット一式
これらが揃っていました。モニタとヘッドセットは大会スポンサーなので恵まれた措置ですが、Switch ドックは参加者の有志が持ってきており、全台事前に設営されてありました。つまり、私達一般参加者は、Switch本体 + myプロコン だけを持って会場に来れば戦闘できます。
モニタ・ドック・ヘッドセットを8台ずつセットで1セクション。これが5セクションありました。
Switch 同士の接続
Switch 同士の接続は;
- ドックはUSBで有線LANにつながって置いてある
- ドック8台がLANポートにストレートLANケーブルで接続
- 自分の Switch を挿したら、各自「設定」で有線LANに設定
- ここでエラーが発生するが、無視して良い。
- (つまり、各Switchはインターネットに繋がっていない。インターネットを介さず、ハブだけで機体を繋ぐ。)
- スプラトゥーン2で各自「イカッチャ」を起動
- 各自「R + L + 左スティック押し込み」でローカル対戦モードに
- 部屋を作成して、あとは8人で対戦
こうしていました。
モニタ
Asus モニタはゲーミングモニタ VX248H です(多分)。24inch で FullHD。Hz (FPS) は書いていないですが、スプラトゥーン2は60fpsのゲームなので問題は無いです。遅延1msecというところが脅威ですね。1.6万円でこの性能というのは時代の進化を感じます。
(コンソールゲームのように60fpsのゲームであれば、1Frame = 16.7msec なので、遅延5msecでも1msecでもそんなに変わらないとは思いますし、現に私は差が分かりません。)
音声
Astro のヘッドセットがつわものでした。
ゲーム大会用に作られた小さなミキサー(MixAmp Pro)が各テーブルに有りました。「ゲーム音」と「マイク音」を入力できるのですが、ミキサー同士がつながっており「マイク音」は共有できます。これで、
- ゲーム音は自分の機体のモノだけ聴こえる
- 味方のマイク音が全て聴こえる
を実現しています。
「そんなのモニタのスピーカーと肉声で良いじゃん」と言われればそれで良いのですが、
アメリカの大会会場は修羅の庭になっており、ヘッドセットで ゲーム音+マイク音 を聞けた方が良いです。特に隣のスマブラは「世界で最も声が大きい観客達」と名高く、叫びまくってコールしているためです。
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https://twitter.com/Genesis_Smash/status/954868411963645952
%}
[実際に隣にいる集団]
このオーディオの部分が、最も日本での再現が難しいです。再現するとしたらしっかりしたオーディオミキサーを買わないといけません。この辺の機器のアクセサビリティはesports産業の差と謂えます。
配信台
{% oembed https://www.youtube.com/watch?v=xCeF4YRg1s8 %}
この内1セットを配信台としてステージを用意しています。配信台だけは観戦モードで入るSwitchが1台あり、観戦Switchをキャプチャして実況していました。
配信機材については、アメリカでよくあるセッティングです。実現するには、大分昔に書きました ウメブラの配信方法 を参考になさってください。
{% oembed https://www.youtube.com/watch?v=l1xRW_8CSFQ %} {% oembed https://www.youtube.com/watch?v=xxO9xG9nino %}
布教が多くて恐縮ですが、スマブラのオフライン大会「ウメブラ」の配信は市販品を駆使した再現可能性高いセッティングになっています。ご参考にしていただければ幸いです。
さいごに
運営をしていた EndGameTV お疲れ様でした。ルール・設営全て併せて高い完成度でした。
実は、アメリカのスプラ勢は日本シーンをしっかり把握していて、日本の有名チームにも来て欲しかったけれども:
- 「大会規模がそこまで大きくないしねえ」
- 「招待する金が無いんですよねえ」
- 「声がけする方法が無いんです」
という理由から断念していました。凄く残念なことです。日本スマブラ界隈ではこの問題を長い年月かけて解決していったため、特に身にしみます。規模が大きくないと言っても、参加者100名ほどがアメリカの広大な大地から集結するため、結構な規模です。ただ、スプラトゥーン2をメイン種目に据えたオフライン大会を開催するのはまだ難しい様子です。
海外遠征
海外遠征に関してはどうやっても「回収できないお金」がかかります。そこでスマブラ勢は Donation や Compendium といったシステムを使ってアメリカまで飛びます。
- Donation : Streamlabs と連携して、ライブ配信しながらファンに呼びかける。「いくらまで溜まったら遠征します」というゴールを設定して、SubscribeやBitsを集める。
- Compendium : 大会が設定する。Smash.gg には機能がついている。「グッズを買うか直接寄付でこのプレイヤーの渡航費に充てよう」という呼びかけ。
[過去のCompendium, 2GG MkLeo Saga]
ただ海外遠征というのは難しく、行ってゲームをすれば完了ではありません。空港からの移動手段・宿泊方法・ご飯の確保・そしてスムーズな出場が必要です。初めて赴く都市では、行く前から大会の現地に信頼できる知り合いを持っておく必要があります。運良くアメリカであれば各地に知り合いは居るため、私から訊いてみることも出来ます。私が初めて遠征した時も、既に組まれていたスマブラ遠征勢のレールの上に乗ってコミュニケーションを取ることが出来ましたので、可能な限りその恩を返していこうと思います。
以上、
前の記事 でも書きましたが、有志のオフライン大会はいくらでも盛り上がって欲しいです。チームタイトルは競技的なオフライン大会を開きづらいとは思いますが、ここに記した要素が役に立てば幸いですし、書いていない点でも、技術的な点であれば @ayuha167 ツイッターへ質問いただければお答え出来ます。