今回は完全にスマブラについて:近日開かれる『ウメブラ Japan Major 2019』についてと、その参加人数1000人というランドマークの意義について、述べていきたいです。
ドラマチックでセンセーショナルな内容かと思いきや、打算的で現実的なお話にしてありますので、そこはご了承ください。
導入
スマブラ勢、特にいま最新作「スマブラSP」をプレイしているゲーマー達には、独特な文化があります。ユーザー主導で、個人で、オフライン大会を開く習性です。オンライン勢の、グループ作成・情報共有も尋常ではないところがあるのですが、私がオフライン大会のスタッフですので今回はここに焦点が当たります。
そのオフライン大会。この度1024名トーナメントが行われます。『ウメブラ Japan Major 2019』です。この意義について申し上げます。
(※文中では「ランキング」と「ランク」は同義で用います。)
背景
『スマブラSP』では(でも)、アメリカの第三者企業『Panda Global』(以下:PG)が、プレイヤー世界ランキングを出すことを発表しています。これは販売元のゲーム会社と全く関係なく、PGが独自に発行し、それがユーザー主導の競技シーンで実効性があります。他のゲームの方からは信じられないポイントかと思います。(ゲームがそもそも色々プレイ方法があり、競技シーンは一側面に過ぎないため、こういった第三者機関が音頭を取ることが可能になってくるのですよね。)
[ PGによるプレイヤー世界ランキング 。こちらは前作WiiU版のもの。]
(PGによるプレイヤー世界ランクは通称「PGR」と略されます。)
これらはゲーム内レーティングとも異なり、オンライン大会・および平日大会を除いたオフライン大会を基に算出しています。イメージとしては、ストVの Capcom Pro Tour の年間ポイントに近いです。
更にこのプレイヤー世界ランキングはというと、「大会世界ランキングの高い大会」での結果をもとに定量的に作成されます。つまり大元に「大会世界格付け」がPGによって認定される訳です。「大会世界格付け」は概ね以下の要素によって定まります:
- 参加人数が合計で何名か
- 世界ランキング(PGR)上位プレイヤーが何人参加しているか
です。数値計算の方法が公開されているため、純粋に数字で決まります。「審査員の評価」などは介入しません。
[
PGによるトーナメント格付け表
前作WiiU版の頃のもの。基準を満たした C tier から順に B,A,S tier まで存在。C tier に入ることも難しい。]
ただ、この格付けはループ(再帰的)になっていることが分かるでしょうか?
- 上位プレイヤーが出場すると大会格付けが上がる
- 大会格付けが高い大会で勝つと、プレイヤーランクが上がる
[PGによるランキングのポジティブサイクル]
そのため前作では、Socal エリア(アメリカ:ロサンゼルス周辺)は非常に有利な地域となっていたと、筆者は個人的に感じています。これについては数値的評価ないです。主観です。強いて言うなれば前作の 第4期PGR です。アメリカ国外の大会では最高でも B tier 評価だったのに対し、アメリカ国内で S tier の大会は10個存在し(『Evo』含む)、うち4つが Socal にて行われました。
逆に、日本プレイヤーは実力に対して評価が低くなりがちでした。特に
生涯成績(スマブラWiiU版4年間の合計)
にて、ちょこ選手35位・ロン選手57位というのは過小評価であることはスマブラ勢には明らかでしょう。
アメリカが悪い、とかそういった二元的な結論にしたいわけではございません。筆者はTO(大会運営)ですから、こういった世界共通の第三者システムで日本勢が相応の評価を受けて欲しいと筆者が思うのであれば、それに足るだけの大会を筆者たちが日本で開かねばなりません。
日本で今1000人大会が必要な理由
以上のように「大会がプレイヤーを規定し、プレイヤーが大会を規定する」ループは発生しています。そこで見落としてはならないのが「最初の定義」をどうするかです。このループの開始地点・第一項をどのように定義づけするかが重要となります。
そこが今回のブログのミソです。「日本で今1000人大会が必要な理由」がここにあります。以下の画像を御覧ください。
[出典 :
@PGStats
, アメリカ外の大会では参加者960人以上で S tier という意味。]
こちらがPGによる「スマブラSP “第一期” 世界大会ランキングの格付け方法」です。ご覧の通り、大会の参加者数だけが、大会の階級分けの基準となっています。(念の為申し上げると、トーナメントへ参加した競技者の人数のみが基準となり、観客は含みません。)スマブラ新作が発売されたばかりですから、大会の参加人数だけが評価指標になるのは当然です。プレイヤー間での実力差に不確定要素が多いですから。
そこで、日本でいまのうちに S tier(格付けS)の大会を開催し、日本勢が上位を占めると、最初のPGプレイヤー世界ランキング(PGR)にて日本勢が多く上位ランクインします。すると、今後日本で開催される大会も多くが大会格付けに於いて高い評価を受け、今後も日本から世界ランキングの高いプレイヤーを輩出できます。上のループ(ポジティブサイクル)を完全に味方にできる訳です。
それだけではなく、日本勢の世界ランキングが上がると、海外の大会が日本勢を招待する定量的な価値が生まれます。大会側も自分の大会の評価を上げるために、日本勢に渡航費を出したくなります。すると、日本勢が海外で活躍するきっかけにもなるのです。
今この「第一期」で S tier 大会を開くことがいかに重要か、説明申し上げました。
ウメブラ Japan Major 2019
[ロゴ]
この度、『ウメブラ Japan Major 2019』は、参加者1024名が満員になりました。S tier として既に認識されています。( Sランク大会認定についてはこちらのURLから )
PGに S tier と認識される大会は、今季(2019年2月1日〜7月7日)は4大会ほどにおさまる予定です。この名誉ある枠に滑り込めたことは光栄です。
{% oembed https://www.youtube.com/watch?v=qcbVuhP0PwM&t=4m51s %} [告知PV]
これで『Genesis』『Frostbite』(アメリカでの大規模大会)と同等の評価を受けた大会が日本で行われることになります。これから日本スマブラ勢の、世界への露出が始まる訳です。
1000人と云っても、25分で満員になってしまいましたので、ご希望に添えなかった方も多いと思います。来ていただける方のポテンシャルはまだありそうですが、2000人規模で実現できない点はウメブラスタッフの実力不足です。
また、「満員」とは順調に見えますが、ウメブラとしてはこれも3度目の正直です。ウメブラは1000人規模の大会を開こうとして、過去に2度、及びませんでした(SGC, ウメブラ Japan Major 2017 )。ウメブラスタッフには意外と命知らずが多く、試行錯誤を経ての、ようやくの1000人大会となります。これからも大会の改良のためにリスクを恐れない姿勢は維持したいと勝手に感じています。
脇道
これで議論は終わりで良いのですが、追記いたします。
ユーザー開催で1000人集めるというのは「ゲームタイトルが売れているから」という理由もあります。勿論そうであり、私も熱心なスマブラファンでゲームに常に感謝しています。そうでは有るのですが、それだけならばWiiの頃もWiiUの頃も1000人集められたはずなのです。(Wii向け通称『スマブラX』[2008年]以降、売上は作品ごとに劇的に変化した訳ではない。)1000という数字は大きくもあり、そこまで大きくはありません。マクロ的な現象を考慮に入れるような数値ではありません。現実的に、競技シーンに興味を持つプレイヤーたちが増えてきたということだと推測しています。
日本の他のゲームでは競技的なものだけでも、公式大会としてより大勢を動員するものがございます。関東で比較しても、毎週プロの試合をチケットを売って行うもの、数万人の観客を動員するもの等、さまざまです。それに比べると、ユーザーの手で・勝手に決めた競技ルールで・独自に大会を開くというモデルは本当に特殊です。いずれ近い内に、ウメブラはどうなるべきなのか概念的なものをしっかり決めないといけない日が来るかもしれません。
以上、
WiiU時代の4年間に、プレイヤー世界ランキングといったシステムがアメリカから整備されました。その間は日本はまだまだ不遇な時代を過ごしたのですが、今回の ウメブラ Japan Major 2019 が、スマブラSP時代を通して競技を追究する日本プレイヤーにメリットをもたらすことを切に願います。
S tier 認定大会で日本勢が優勝したことは、未だにありません。たとえ日本開催と雖も、優勝すれば大きなポイントです。…これがなにかのフラグにならないと良いのですが。
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