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Aug 4, 2021 - others

空手 形競技について:観戦向け導入ガイド

空手には「形」(かた)競技があります。本文は動画勢(観戦専門のエンジョイ勢)としてこのくらい知っておけば楽しめるという要素をまとめました。

空手道は大先輩・先人が多く、筆者程度の知識では申し上げるのは恐縮です。殊に歴史のグレーゾーンが多いので記述することも難しいです。しかし、筆者が普段観戦を楽しめるのと同様に、まだご存じない方々にも布教出来ればと思い、適宜情報をピックアップして残しました。

概要

伝統空手で競技大会を行う場合、主に2種目があります:

  • 組手
  • 形(かた)

です。

「組手」競技はポイント制でわかり易いです。フェンシング・アマチュアボクシングと同様です。空手の組手はフェンシングらと比較した特徴として、防具ナシの人間に対してパンチ・キックを両方狙うため、広い間合いから高速で技が飛んでくるところは魅力です。そもそも「組手」という単語自体が空手語源だと言われています。

それに対して「形」(かた)は競技があることをご存じないことも多いでしょう。空手を道場で習っていた・部活で取り組んでいた方々にはご存知でしょうが、組手ほどの知名度は無いでしょう。

“代替メッセージ”
[空手の練習光景。 KARATE JOURNAL より

空手(及びそれに繋がるもの)は最長で700年、最短でも200年ほど活動実態があります。しかし、その分謎が多く、源流や経緯は不明です。分かっている限りは沖縄発祥の必殺拳であり、柔道の普及に追従して1900年以降に本州で武道として広めたものが現代の「空手道」です。空手自体にはこうした伝統があるのですが、現代の組手・形の中の「競技」は第二次世界大戦後に整備されたものに過ぎません。

そんな複雑な文化である空手ですので、これを期に全くご存じない方のために、Q&A形式でまとめることにしました。

パート Ⅰ. から Ⅲ. までございます。

Ⅰ. 形とは何か

まずは実際の試合映像を御覧ください。

形の実際の試合映像 World Karate Federation 公式チャンネル より。2014年の決勝。]

こちらの映像は古めですが、この日本の方(喜友名諒 選手)はオリンピック代表でもあります。採点ルールが現在と異なるのでそこは注意です。

パートⅠ.では具体的に、試合では何が起きるのかをまとめます。

Q. 空手の形競技ってなに?

文章で表すならば こちらのキッコーマン社のページ に説明がございます。そこでは形とは:

形は、古くから伝わる攻防の技を、一連の決まった動きにまとめたもので、相手を仮想して単独で演じます。7人の審判が、技術点と競技点それぞれの評価基準に基づいて採点をします。

とあります。つまりは採点競技です。

具体的なルール説明は、こちらの動画が一番わかり易いです。

[全日本空手道連盟による、2分半で分かるルール説明。 元動画URL

いざ大会の実戦。体育館で他の出場者に見守られる中、8m四方のフィールドでたった1分ほどの演武を終えると、汗だくになります。そのくらいの集中力と緊張感があり、想像力を働かせて動く必要があります。2回戦や決勝戦がある場合はこれが続きます。
この「短くて伝統的でかっこいい」というのは、現代人に響く所も多いのでは?と思います。

Q. 形って何があるの?

形一覧はこちらにございます。伝統的な「形」が100個ほど指定されており、その中から自分で選んで演武します。空手は沖縄発祥ですので、多くの形は沖縄の言葉で名前がついてます。…ただ、凄く多いです。今ご覧になっても意味不明でしょう。

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国際大会で使える形一覧 英語 この38p。]

この中から自分で選んで演じます。100個有るとは言っても、みんなご自身の流派がありますので、実際に知っている個数は多くとも10種類くらいで、糸東流の人で大会で勝ち上がることを真剣にやっていらしたら30個くらいご存知でしょう、という感触です。

武術・武道というものは入門の形から文字通りの “奥義” まで存在します。おそらく空手を習っていた方でも入門の形(ピンアンやゲキサイ)までの方も多いはずで、段位を取って黒帯になったくらいでも古流の指定形を習い始める程度です。

世界レベルになると決勝戦・準決勝で見られる形は “奥義” であることが多く、例えば「ウンスー」は空手を習っていた方でも聞き覚えが無いことが多いです。もしテレビでオリンピックをご覧になったり、今後動画などで空手の決勝をご覧になった場合は、「これが…奥義か…」と噛み締めてください。

※本来「形」に優劣はありません。入門からマスターまで、自分の熟練度に合ったモノを、先生・道場から教わって継ぐものなのですが、競技ではどうしてもアピールしやすい形というものがあります。また、どうしても自分の中で得意不得意・好き嫌いが発生します。そのため大会で選ぶ・選ばないの要素はありますが、どんな形も正しく習うことは凄く大事です。

Ⅱ. 観戦を楽しむポイント

形については以上です。

ここからは競技者の視点に踏み込みます。
大会では何を見れば良いのか、ルールがどうなっているのか等に踏み込みます。

Q. 採点項目は?

採点項目は

  • Technical Point 70%
  • Athletic Point 30%

と決まっています。…ここは説明すると長くなりますが、独自に勝手に訳しますと「理解」が7割、「スピード&パワー」が3割という意味です。

殆どのパフォーマンス競技は「スピード&パワー」:運動能力や技の難易度で採点されると思います。動きの速さ・ジャンプの高さ等です。空手にもこの要素はありますが、3割しか占めません。

逆に、空手で重視されている前者の「理解」が特殊で一見意味不明でしょう。これは「この形は何をするモノか理解しており、それが行動に反映されているか」です。寧ろこここそが空手を空手たらしめている独自性です。

例えば、顔を防御する動きなのに手の位置が低かったりすると駄目です。守る時に目線が遅れると駄目です。大まかにはこういうポイントですが、競技シーンになるとより細かい理解も見られます:

  • 気合(声出し)のタイミングは正しいか
  • 息の呼・吸のタイミングは正しいか
  • 手と足の動き出しは一致するところは一致し、終わりは合っているか

これについて一つ図解します。上の 形の実際の試合映像 でも紹介しました2名です↓。

“代替メッセージ”
[比較A. 開始1分10秒 、日本の喜友名選手は前の手を回転させながら前進、を2回繰り返します。言葉では説明出来ないですが、手と足に絶妙なタイミングが求められ、喜友名選手は非常に正確です。]

“代替メッセージ”
[比較B. 同じ動画の開始3分54秒 、Smorguner 選手は前進した後にバックして防御の姿勢を取ります。これはバック直前の映像です。私が指摘するのもおこがましいですが、この前進の瞬間の後ろ足の膝が少し比べて曲がっています。これでは少し減点されるはずです。]

広く見渡せば、空手の競技はすんごいマスターだけが行う訳ではありません。小学生からシニアまで幅広く大会があり、同様の基準で判定します。殆どの場合、手の位置・目線で試合が決まることとなります。スピード&パワーよりも、こちらの「理解」ということです。
ただ、プレミアリーグや全日本クラスになりますと、「肩で息をしていないか」とか細かいポイントが差を分けるようになり、また3割の「スピード&パワー」でも鎬を削ることとなります。

Q. 強い人の特徴はなに?

強い人の特徴とはつまり「形を理解し、スピードもある」ということになります。皆さん流派も違いますし、統一的な強さを言葉では表しづらいです。

ひとまず今の環境で共通する要素を強いて挙げると「年長者」ということになります。

形は「理解」する側面があり、それが行動に反映されていなければなりません。例えば「後ろ足の膝は伸ばす」なんて知識は子供でも分かっていますが、いざパフォーマンスの場で全ての項目を正しく実行できているかは別問題です。これには長年の修練が必要です。結果として、年長者が強い環境となっています。

現状、男子の喜友名選手は31歳、女子のSanchez選手は39歳と、パフォーマンス競技としては年齢が高めに成熟する競技と言えるのでは無いでしょうか?
(参考として、スケボーの金メダルは男子22歳・女子13歳が獲得しています。)

また、形の方が組手と比較してムキムキの選手が多いです。実際に戦う組手と比較して、一人で演武する形がムキムキになるのは意外かもしれませんが、色々理由があります。実際に試合をご覧になると納得が行くと思います。組手はバネを活かしてヒュンヒュン跳んでいくのに対し、形はスピード&パワーをアピールするため筋肉があった方が有利です。

Q. なにを知っておくと観戦を楽しめる?

未経験の方が観戦する具体的なポイントは何でしょう?ここが難しく、上記のように「理解」を要する形という競技ですので「空手をやる」が一番の解になります。まあ、そうもいかないと思います。

出来る範囲では、

  • 体幹のバランスがしっかりしているか
  • 声を出す瞬間と殺す瞬間は一致しているか
  • スピード&パワーを感じるか

この辺をご覧頂ければと思います。そして、特に決勝はどちらが勝ったかご自身で評価してみて下さい。

Q. 注目選手おしえて?

すごく主観的になりますが、こういった選手が決勝に来ると思っています:

■ 男子

  • 喜友名諒(日本, 劉衛流)
  • Damián Quintero(スペイン, 剛柔流)
  • Antonio Diaz(ベネズエラ, 糸東流)

既に画像で用いました喜友名選手はよく注目されます。この「劉衛流」というのはごく一部の空手家しか名乗っていません。詳しくは他の文献にお任せしますが、元は一子相伝であった流派で、近年門戸が開放されたばかりです。独特な流派ではありますが、試合では上記リストに入っている形で演武します。

■ 女子

  • Sandra Sanchez(スペイン, 剛柔流)
  • 清水希容(日本, 糸東流)

特に Sanchez 選手は2017年にスペイン年間最優秀女子スポーツ選手に選ばれるなど、自国内での評価も非常に高いです(同年受賞の男子はテニスのナダル選手)。

気になる方は、こちらの Wikipediaページ から形・組手に出場する全選手をご覧になれます。

“代替メッセージ”
[スペインの Quintero, Sanchez の両選手。 画像元URL

Q. どの国が強い?

国単位でこれぞ、という国はやはり日本になります。上で選手について触れましたが、国で分けますと男女ともに形の決勝は日本vsスペインとなりそうです。

これは「形はここが強い」「組手はここが強い」ということは無く、空手の全体的な普及度でだいたい決まります。形・組手ともに、同じ国が強いです。上の2国以外にも、以下のような地域が普段の国際大会でTop8くらいまでは勝ち上がる候補となります:

  • ヨーロッパ・中東の全域
  • 小アジア(アゼルバイジャン・トルコ・ジョージア等)
  • 北アフリカ(モロッコ・アルジェリア等)
  • 東アジア(マレーシア・上海・香港・韓国・台湾など)
  • 中南米(ベネズエラ・ドミニカ・メキシコ・ブラジル等)

特に日本発祥の武道・競技で、中東〜小アジアの国々がTop8に多く上がってくる様子は興味深いです。

Q. 代表はどう選ばれるの?

例えばオリンピックに出場する各国の代表は「過去の国際大会で結果を出していた人」です。
念の為申し上げますが、「この流派から〇〇人まで」という制限はありません。

2010年以前は国際大会は2年に一度しかなかったのですが、近年制度が整いました。パンデミック前の2019年は各国が代表を送る「プレミアリーグ」という大会だけでも7回ありました。今誰が強いのか、という部分は可視化されやすくなっています。

Ⅲ. その他のポイント

ここまでの内容で競技を見る分にはある程度の助けになるはずです。

ここからは少し深い部分、マニアックなパートの入口になります。

Q. 採点は納得行きますか?

読まれている方は「ここが気になる!」のだと思います。

これについて、筆者は空手に関して観戦者に過ぎないですが、結構納得している採点競技です。

一番の要因は、決勝戦が1対1になるところです。事実上「二者択一」で「どちらがよかったか?」を選ぶ形になります。採点競技でも二者だけを見てどちらが良いか選ぶ場合、素人目にも分かり易い結果になります。空手の性質上、天候・運要素も混ざりません。

今は国際戦ではルールにアップデートが入り、予選は8人1組となり、採点結果が最も高得点の選手が次に勝ち進むようになりました。それでも決勝戦は必ず2名の1対1です。

少し前までは完全に「採点方式で1対1ノックアウト方式」(所謂トーナメント)という珍しい形式で実に面白かったのですが、改定がありました。(普段筆者はゲームで大会運営をすることも多いため、この改定も気持ちは分かります。)

“代替メッセージ”
[形競技のかつてのトーナメント表 画像出典 。そのラウンドで使った形の名前が記載されています。]

すると、そもそも「採点競技・パフォーマンス競技なのに複数ラウンド有るの!?」という疑問を抱かれる方もいらっしゃるでしょう。オリンピックは別ですが、空手は国際大会では4回戦くらいに分けて決勝戦まで進めることが一般的です。
パフォーマンス競技は基本的に全員が順次演技を行い、出た点数で一斉に評価します。勝ち上がり方式であることは珍しいです。
空手は伝統的な「形」を選んで演ずるため、スノボー・スケボーやフィギュアスケートのように高難易度技に挑戦する訳ではありません。リスクリターンのある演技とは趣が異なります。ならば、上手い人が転倒することも無いですし、なぜラウンドを分けて一人複数回のパフォーマンスを実施させるのでしょう?全員が一度演武して終了、では駄目なのでしょうか?

結論としては駄目です。形が「理解」する競技だからです。
大会内では一度使った「形」はもう使えなくなるルールとなっています。ここが競技のポイントです。すると、優勝するまでにたいてい4つは形を選ぶ必要が出てきます。複数個の形を理解し、学び、仕上げることで、空手の文化を継ぐことが大会に込められたメッセージになっています。

Q. 同じ人が形・組手両方に出場するの?

半分違いますが、半分正解です。

現実的に見かける競技の舞台では、片方にしか出場しない選手が大半です。形には形の代表、組手には組手の代表が割り当てられています。「近代五種」みたいに別種目に同選手が出る訳ではありません。

ただ、空手を学ぶ者は必ず両方取り組むこととなります。筆者も10年以上前に大会に出ていた頃は、形・組手の双方に出場していました。

大会は競技の世界ですから、二刀流は中々居ません。得意不得意や努力のリソースもあるため、たいてい形・組手のどちらか一方しか国の代表クラスまでは勝ち上がれません。

本当にたまに二刀流の方もいらっしゃいます。例えば昨年の全日本を制した大野ひかる選手は数年前まで形・組手の両方で全日本に出場していましたし、オリンピック形代表の喜友名諒選手も大学までは大学の全国に団体メンバーで組手で出場していました。

[組手日本代表の植草選手による形。 元動画は全日本空手道連盟チャンネルより 。ご覧の通りすごく上手いように、空手経験者は形・組手の片方だけやる、ということは中々無いです。]

Q. 誰が採点するの?

資格を持っている審判が採点します。

審判資格はかなり「オタク」です。競技者がそのまま審判になれる訳ではありません。100個以上ある形の、上で述べた「理解」が必要となるからです。

まずは空手で黒帯(=初段)になるのに3~5年はかかります。形・組手の両方の実技が必要です。続いて、色々理屈は省きますが黒帯になってから三段になるまでに4年かかります。これでようやく審判の資格を受ける最低条件が揃います。
断っておきますと、競技大会での成績と段位は連動しません。あくまで伝統を理解し、形と組手の両方で空手の求める水準に達した人に段位が与えられます。そのため「組手で世界優勝!初段です」みたいな人は本当に登場します。

しかし、ここまでの段位は自分の流派での話です。ここから流派を超えたペーパーテスト(競技ならば主に四大流派)を受けて最初の審判資格が得られます。が、審判にも階級があり、審判になってから国内のA級審判になるにも5年はかかります。日本は特に基準が厳しいですが、海外に居たとしても似たような審判の規定があります。
結論として、審判になるには:

  • 黒帯→3段→審判資格→A級審判→実績を積む

という手順が必要です。ハードルは高いですが、門戸は開かれています。今は動画もあるため、国際的にも統一的な水準を保つことが出来ていると、観戦する分には感じています。

こうした制度が整備されているため、「お気に入りの選手を勝たせたくて審判になる!」といった事態はかなり起きづらいです。本当に空手が好きで、貢献していなければ審判になれないシステムが出来ています。ここは武道の文化的活動・道場のシステムを作り上げた先人たちが凄いなあ、と感心するばかりです。

ちなみに合格された方はこのように 全日本空手道連盟のページで発表 されます。

Q. そもそも形って何?

ここまで読まれた方は、空手が競技のみならず段位・指導員や文化全般として「形」をこれほどに重視しているところに疑問を持つでしょう。

形とは空手そのものである、と筆者は解釈しています。
ここは空手の700〜200年に亘る深長な謎の中なのですが、筆者の解釈ではむしろ形を継ぐことこそが武術であると解釈しています。例えば山城美智さんは:

「空手とは師から形を受け継ぐこと」

と述べています( 元動画 )。

空手は元々は沖縄の武術であり、文字通り “一子相伝” で伝えられて来ました。そこから明治の文明開化後に、琉球の貴族(士族)が本州に上陸して武道として普及させました。一子相伝で伝えた内容や、20世紀初期の頃の先生たちが本州で普及させたものも「形」です。要するに、組手は教えていませんでした(ごく一部の先生を除く)。

形は、昔の人がどのように戦っていたか、言葉ではなく体で伝えている文化です。

[形にはこういった戦闘情報が含まれているよ、という動画の例 URL 。こちらは長めです。]

形は「実戦的ではない」と批判する方も部外者の方ですといらっしゃいますが、目的がそもそもそこにありません。最適解を求めるプロ格闘技と比較して、空手を武術・武道たらしめているところが「形の継承」の側面というのが筆者の見解です。上でも採点項目で「理解」が点数配分7割と述べましたが、こういった「伝統を継ぐ」というメッセージがルールに反映されたためと解釈しています。
ただ、空手の歴史が長すぎるため、果たして「形」とは何だったのか、源流の方々がどう捉えていたのか明確には言えないのが現状です。

1900年以前はストリートでの乱闘や「掛け試し」といった戦闘があったため、人は己を守るためにに武術を習い、乱闘を助長しないため・乱闘から区別するために武術では組手をしなかったと筆者は推測しています。
空手に強く影響を与えたと言われている、全ての根源である中国武術もこのような発想でした。最もこの文化のイメージに近いものは、映画『イップ・マン』の世界観かと筆者は思っています。

“代替メッセージ”
[映画『イップ・マン』 WatchMojo.com チャンネルより 。1900年前後の南中国の武術・拳法を描いた作品。19世紀空手の先人たちは中国での修練を誇ることがあったが、実は近年の研究によりあんまり中国で習っていなかったのではないかという指摘もある。]

よく「組手」も、見た目が近い総合格闘技やプロボクシングと比較されることがありますが、筆者の解釈ではこうした格闘技は近くありません。競技の「組手」は第二次世界大戦後に整備されたものです。そのため、空手の「形」の概念に合うような試合になるよう戦後に整備したはずなのです。
この真偽はさておき、ここまで形を重視している武術・武道であるという空気を感じて頂ければ幸いです。

以上

本日は以上です。 少しでも空手の「形」のイメージを持って頂ければ幸いです。

謝辞となりますが、今回は競技性全般について一家言ある YON さん にチェック頂いて、貴重な意見をたまわり編集が行われました。本当にありがとうございました。

まだ筆者から申し上げたいことも多くございます。流派とは何か、競技以外の空手の側面は何なのか、そもそも競技シーンはどのように解釈されているのか、現在の沖縄の源流について等、調べられることがいっぱいあります。寧ろ歴史が好きな方は、是非空手について調べてみて下さい。良い趣味になると思います。

一旦、今回は以下の補足を除いて終了といたします。

※偶然にも昨日、同様のコンセプトの内容を全日本空手道連盟が投稿していましたので、こちらも是非チェックしてみて下さい↓。

全日本空手道連盟による形

蛇足

蛇足です。

今回の Q&A 文章は、実際に空手未経験者の方に筆者からいきなり「空手について質問ない?」と話題を振って、出てきた質問を基に作成しています。その中でも聞かれる頻度が高かったものの、今回の本筋に関係無いところを以下にまとめました。

Q. 空手って瓦割るの?

丸めて申しますが、オリンピックの空手に興味が有る方は 割ったことが無い 人が多いはずです。

オリンピックで用いるのは「伝統空手」の方です。武道として認定されている「全日本空手道連盟」なども寸止め形式の「伝統空手」となっています。私もこちらでしたが、瓦を割ったことはありません。

空手がバットを折ったり瓦を割ったりするイメージは「フルコン空手」という別ジャンルから来ています。 極真空手や実践空手と呼ばれるものは、「フルコンタクト空手」略して「フルコン空手」に分類されます。こちらは寸止めではなく試合でもKOを狙う方です。
基本的に「カラテ」とカタカナで書く場合はフルコン空手です。

ここの経緯は複雑で面白いのですが、今回は省きます。しかしどちらも発展した文化となっています。
歴史が好きな方は、フルコン空手発祥の経緯全般を調べて楽しめるはずです。これを期にネットで歴史を探ってみることをオススメいたします。

Q. 組手って?

空手競技の「組手」について最後に手短ながら申し上げます。
こちらの動画がわかり易いです↓

全日本空手道連盟による1.5分で分かる組手のルール

基本的にはこちらの動画で良いのですが、少し補足します。組手は手と足を用い、定められた箇所に攻撃を入れるとポイントが貰える試合です。上でも述べましたが、ポイント制というところがフェンシングに似ており、剣道にも近いでしょう。

ただ、伝統空手はよく「寸止め」と呼ばれるように、ゴ〜ンとクリーンヒットさせてはいけません。パンチを顔に当てて音も出るけれども、相手にダメージが入らないような感じ、で突かなければポイントと認められません。
また、パンチ後にはすぐに手を引いて、元の構えの姿勢になっていなければポイントとなりません。これは空手の世界では相手を一撃で殺した想定であり、すぐに次の人間を相手をする体制になっていなければならないからです。

広い間合いから高速で技が飛んでくるため、経験が無いとどちらのポイントか分からないと思います。念の為憶えて頂きたいのは、当てる側がちゃんと手・足が届いており、食らう側がノーガードでないといけない所です。

速すぎて分かりづらい部分もありますが、1点差も蹴り一発ですぐ逆転されてしまう点・逃げ回る反則がすごく重い点から、お互い攻めて点数の取り合いになることが多いです。

この際、形と一緒に是非組手も観戦を楽しまれて下さい。

※形と同様に、全日本空手道連盟からも昨日紹介動画が出ましたのでご参考に。

全日本空手道連盟による組手