恋心は超グリーディ

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Dec 20, 2020 - gamerlogy smash

スマブラ勢は「終点固定アイテムなし」ではない

なぜこれを記そうかと思ったかと言えば、「スマブラ勢 終点固定」でぐぐるとそれを否定するウェブサイトがなかなかヒットしないためです。

“代替メッセージ”
[シークレットウィンドウで「スマブラ勢 終点固定」でぐぐった結果。1つ目はWii版『スマブラX』(2008年)のモノで、2つ目は任天堂による『スマブラ for 3DS』向け公式説明(2014年)であり、3つ目に至っては全然違う筆者のブログです。]

※「スマブラ」は『大乱闘スマッシュブラザーズ』の略で、シリーズ作品のため略称は適宜通称を用います。今回は主に最新作である「SPECIAL」(SP, Nintendo Switch 版)について説明します。

スマブラ勢ならば「終点固定なんてやらないでしょ…」と分かるのですが、明確にそれについて述べている単体ページは中々探しづらいです。この話題にはブログでも折を見て触れているのですが、そのため今回は単体でこのテーマ「スマブラ勢と終点固定アイテムなし」について改めて1ページ記そうと思い立ちました。

筆者は仕事でゲーム関連の人と会うことが多いため、それですとゲームの競技シーンに理解がある人が多い環境ですが、しかしながら日頃から「スマブラ勢って終点固定でアイテムなしでやってるんじゃないの?」と訊かれることが多いです。そのため、よく述べている反論をまとめることにしました。

「終点固定アイテムなし」とはなにか

ぐぐったのですが、この定義について明記されている場所が無かったため、改めて書きます。(ご存知ならば飛ばして下さい。)

スマブラシリーズは、ファイター(使用キャラ)を選び、そして戦う場所 = ステージを選択して対戦する2Dアクションゲームです。ゲームの特性上、ステージとは歴代の他ゲームタイトルから世界観を借景して出来たモノとなっており、上下左右に足場が広がり、中には移動やギミックがあるモノが多いです。しかし「終点」というステージは平面で単純な形をしています。また、スマブラというゲームはアイテムを使うことが出来、これまた歴代のゲームに登場した道具をアクションで用いることが可能です。

ただ、アイテムには発生にランダム要素があったり、ステージにも乱数で移動するギミックもあるため、一見「真剣勝負の場にはふさわしくないのでは?」という神話があります。スマブラシリーズでは、プレイヤーがゲーム内ルールを自主設定出来ます。すると、友達と真剣勝負をしたいならば最もシンプルで運要素が少ないルールは「ステージは終点のみ、アイテムはなし」となります。これが今回の「スマブラ勢は終点固定アイテムなし」に言わんとすることであり、これを否定し原因を分析するのが以下となります。

スマブラ勢は乱闘をしないのか

スマブラ勢はおそらく、他者と比較して最も乱闘をしています。人の見ている所・見ていない所で遊んでいます。

たいてい、非公式の競技用の大会が終わったら、みんなで一緒に家に帰ってなにをするかと言えば、乱闘です。4人や8人でアイテム有りステージなんでも有りでやります。ある日、深夜に疲れたら何をするか。乱闘です。

ただこれだけだと証拠になりません。意思表示に過ぎないです。それでも改めて断っておきますが、スマブラ勢は「終点固定でアイテムなし」を全局面で信奉している訳ではありません。

では続いて、乱闘をしている事例を具体的に挙げます。

公式大会はアイテム有り

『第N回 スマブラSP オンラインチャレンジ』のように、任天堂さん主導で発表される通称「公式大会」というものがあります( ウェブサイト )。この大会シリーズでは基本的にステージはバラバラでアイテムも有りとなっています。(北米・欧州でも場合によりますが、概ね同じルールで開催されます。)

必ず誰でも参加できるオープン予選を経て本戦へと至るのが公式大会の慣習ですが、たいてい勝ち抜いて決勝へ登るのはどこかでスマブラで活動をしているプレイヤーが多いです。

特に2020年COVID-19下ではオンライン公式大会が主流であり、予選は誰でも家から参戦できるため、『スプラトゥーン2』のフェスのような感覚で多くのプレイヤーが参加します。ここの具体的人数は表示されていませんが、大会後にスマブラ勢が「今回の大会はスコアいくつでした」とツイートする姿を目撃される方は多いと思います。これで言わんとすることは「スマブラ勢強いね〜はいはい」ということではなく、スマブラ勢も「ステージなんでもアイテム有り」のルールにも積極的に参加するということです。

このように、「スマブラ勢は終点固定でアイテムなしのみ」という像は余り現実に合致しません。

公式大会以外も「終点固定」ではない

スマブラというゲームは、日本でも海外でもプレイヤーが主催する「非公式大会」(呼び方は様々で「コミュニティイベント」「ユーザー大会」など)が盛んです。このブログでも既に「競技」とか「非公式」といった表現を出しましたが、それらはコレを指します。こうした大会で「ガチ勢は終点固定なのでは?」というイメージを抱かれている方もいらっしゃるでしょう。

まず、注意頂きたいのですが、ユーザーが主導する競技的な 1on1 用の非公式大会でも「終点固定」ということは絶対に無いです。

“代替メッセージ”
[アメリカでの最大級の大会での使用可能ステージです。「終点」も含まれていますが、それ以外もあります。]

敢えて「絶対」と申しましたのは、終点は特殊なステージだからです。もしかしたらどこかに終点固定大会があるかもしれませんが、稀なはずです。前提として「終点」は「平面である」ということが特徴となっており、ユニークで独特ですらあります。非公式大会では、終点を選択可能なステージにほぼ必ず入れますが、試合でプレイヤーが選択するとは限りません。

例えば、 こちらの Reddit では過去の非公式大会で選ばれたステージの統計を取っていますが、「終点」の選択率は8%程度です。個人が一度測ってみた程度なので厳密なデータではありませんが、筆者の直観には合致します。終点は特定のファイターに偏って有利なステージであり、筆者も余り好んで選択しません。

※参考: 過去にどのステージが非公式大会で導入されていたかの歴史 …かなり多様なステージが使用されきたことが窺えます。

このように非公式大会、所謂ガチ勢でも、終点固定ということは無いことが見えるかと思います。

ただもう一つの要素「アイテムなし」については、非公式大会の場では主流であることは事実です。実は非公式大会でもアイテム有りだったこともありますが( 2004 MLG )、今は一般的に使用されていません。ちなみにアイテム設定がなくともファイター自体がアイテムを生成する者も多く、システム的にアイテム湧きをOFFにしていても試合にアイテムの要素は登場します。

これは筆者の解釈ですが、アイテムなしの設定はスマブラ勢が集会を開くための自然淘汰だったと考えます。上でも申した通りユーザーが自主的に開催する非公式大会は凄く多いです。そこで、特にオフライン大会ですと、日本国内やアメリカ国内でも何万円という移動費を払って参加する方が多く、何百人・何千人という人数が自腹を切ります。2013年まではスマブラの大会は世界最大でも1種目200人くらいの参加規模でしたのでまだ運営が好き勝手が出来ましたが、今は規模が違います。「何万円も払って大会に来たのに運要素で負けた」となると納得が行かないか、そもそも運要素を恐れて大会に行かなくなります。そのため、「ガチだから」というよりは、みんなで集まって思う存分スマブラをするために、数ある大会やルールの中から運要素が少ないものが生存しました。…と考えています。
「人と会うのが楽しいから」「みんなで集まって熱くなりたい」という夢を実現するために、試行錯誤の末にこのルールに落ち着きました。そして改めて、「終点固定」はこの理論と関係ないため、余り存在しないルールです。

実際に、大会では負けて終了した方々が集まって「キャラランダム・ステージランダム・アイテム有り」の乱闘している様子が散見されます。体感ですが、1on1 の競技的な大会は「仕事」的で、乱闘は「趣味」としてしっかり意識が分かれていて、且つ両方とも楽しんでいるプレイヤーが主体だと筆者は受け止めています。

補足「勇者は禁止」ではない

補足ですが、「スマブラ勢って終点固定なんでしょ?」よりも筆者が出先で訊かれる質問は「勇者って禁止なんでしょ?」という質問です。

これが最大の誤解です。前提として「勇者」とはドラクエシリーズの主人公で、現在はスマブラで使用可能キャラとなっています。この「勇者」の攻撃に大きな運要素が有るため、こうした誤解が広まっています。

原因はウェブメディアで過去に「オーストラリアの公式大会で勇者が禁止になった」といったモノが拡散されたことが考えられます。この大会は元はユーザー主催の非公式大会で勇者を一度禁止して開催したことがあるのですが、当大会が Nintendo Australia に公認を貰っていたため、特に話題に拍車がかかりました。ただ、日本・北米・欧州のルールで、基本的にファイター禁止はありません。ここはこの機にお見知り置き下さい。

そして筆者の主観ですが、勇者の運要素よりもゲーム&ウォッチの「ジャッジ」(数字の9を出すヤツ)の方が問題です。

ではどこで「終点固定 アイテムなし」になったのか

ここまで例を挙げましたが、スマブラ勢はトーナメントでも終点固定でやっていないですし、日頃はアイテム有り乱闘もしています。

それでは、本当にどこで「スマブラ勢って終点固定でアイテムなしなんでしょ?」という論調は生まれるのでしょうか。どういった方がリアルで対面した際に私にこの質問をするのでしょうか。上のウェブメディアの例がある「勇者禁止」神話と異なり、出典を定めることが出来ません。

これに関しては謎です。調べても出てこないので、逆に言えば、インターネットに現れない場所で論調は形成されていると推測できます。推測レベルですが、以下考えうる3つの可能性について述べます。:

① 友達にそういう人がいた場合
学校・友達の輪で、どこかに一人「対戦するなら終点固定でアイテムなしでやろうよ」と言い出す方は居る(居た)と思います。筆者は余り「ストック制アイテムなし4人乱闘」は好きではないのですが、そういった人数問わず「終点固定アイテムなし」を好む方はお見かけして来ました。
どうしても学校で友達の輪が固定されていて、そのうち一人が「終点固定アイテムなし」に拘っていると「スマブラをやっている人は不寛容なルールしか使わない」という体験をしてしまうと思います。
その「一人」がどのように発生するかは謎です。塾講師だった時代に生徒にも居ました。ただ、大会の映像をご覧になればすぐに競技シーンでも「終点固定」ではないと分かるはずです。おそらくはスマブラが好きだけれども独りよがりになっており、情報を調べたりはしていない方が、「終点固定アイテムなし」に至るのだと推測します。

② 3DS/WiiU 時代の影響
確かに前作である『スマブラfor3DS』および『スマブラforWiiU』では、オンライン対戦のランダムマッチングで「終点固定アイテムなし」を選択することが出来たため、その影響はあるかと思います。ただ寧ろこのオンラインマッチングを経験していると:

  • 「終点固定って特定のファイターが強くなり過ぎるのでは?」
  • 「これって特定の条件下でやる時のルールであって友達とは無理かな…」

という発想になってくると思います。するとオンライン対戦はし始めたけれどこうした感想を抱くところまでは行っていないプレイヤーの方が、「終点固定」の発想に至るのかなあと推測できます。するとやはり上述の「スマブラは好きだけれど情報を調べていない方」という像に至ります。

③ ネットでは1on1が目立つ
上でも述べたように、筆者の視点では現在の非公式大会の競技シーンは「みんなで集まりたいから」という動機でルールが出来ていると思います。色んなルールでやっている人は地域ごとにバラバラなルールで其々遊んでいるのですが、みんなで一箇所に集まって対戦したりコンテンツを共有したりする場合は統一ルールが必要です。それで現在の1on1「アイテムなし」ルールに至ると考えています。
すると、同様の理由で人の交流地点であるインターネットでは、現在の非公式大会ルールが拡散されやすいです。RT もされれば再生されてサジェストされることも多くなります。そのため各地域や友達の輪では独自のルールで対戦していても余りネットで拡散されていないから、一見「今は1on1のアイテムなし」ルールで対戦している人が多いと誤解されがちかと思います。ただこの理屈だと「終点固定」という発想にはなりません。(ネットで拡散されている非公式大会ルールは終点固定ではないからです。)

…以上①②③のような理由から「終点固定アイテムなし」神話は発生してしまう可能性があるかと思いますが、これは強要されるルールという訳ではありません。実際はスマブラ勢も変なルール(おかわり5on5, SSQM, デデデラン など独自ルールは多数存在)で色々遊んでいます。4人居たらチーム分けして2on2をしたり、タイム制のアイテム乱闘をします。

もしルールが友達から強要される環境下にいらっしゃるならば、大変かとは思いますが、このページを活用してそのお友達を説得すると、好き勝手な対戦の面白さに気付いてもらえるはずです。是非試してみてください。

これを機に「ストック制アイテム有り」ではなく「タイム制アイテム有り」を試してみてください。

さいごに

スマブラ勢の方々へ。2015年あたりから他のゲームの方とリアルの場でお話しし始めた際は、私が「スマブラ勢です」と自己紹介すると物珍しそうに:

  • スマブラ勢なんていたんですね
  • パーティゲームで勝敗なんかつかないんじゃないですか?
  • 大会とか人来るんですか?

といった話題を必ずと言っていいほど振られました。これについて過去に書いた際は、スマブラ勢の皆様から「そんなヤツいねえよ」「どこの話だよ」と批判を受けました。ただ、もしこれを読まれている皆様が他のゲームについて、例えば Valorant の現在の競技シーン環境をご存知ないならば、逆も然りで Valorant のプレイヤーもスマブラ勢について余りご存じないはずです。

スマブラ勢は今はびっくりするほど増えましたが、それでも外の世界は存在します。「スマブラ勢でしたよね?」と誘われて Joy-Con で乱闘することはありますし、「勇者禁止」神話について訊かれたりします。情報や認識の障壁は減りましたが、それでもなお発信すべきことは発信しないとなあと思う限りです。

以上

(この内容は元々書いて寝かせてあったのですが、この機に公開しています。)

最後に2つ、申し上げます。

1つ目に、筆者は以前「空手」という特殊な競技をやっていました。元々空手とは道場毎に一子相伝する必殺の拳法であり、外で徒に見せて競うようなモノではありませんでした。明治時代以降に武道として定着しましたが、武道というモノも競技というよりは精神性を重視する世界です。そのため現代では空手の競技そのものに反対意見を唱える大人がネットで散見出来ます。多少スマブラと似た状況かと思います。
ただ独自の理論ですが、筆者は競技化することで裾野が広がると考えています。競技は精神性やエンジョイ・エクササイズの側面を壊す訳ではなく、寧ろ共に存在できるモノです。一方で競技がないとモチベーションが湧かない好戦的な若者たちを夢中にさせる力があります。「観戦」という機会も生まれます。現に、空手は競技化が世界で進み、以前と比べて家に居ても遥かに多くの資料を見つけることが出来るようになりました。そのため、競技は人を取り込む力があり、何かを排除するモノではないという意見です。

2つ目に、過去に筆者は 『社交スマブラ紳士への導入』 でも似たような内容を書きましたが、相手のやりたいルールに合わせることが大事だと思っています。これは、自分の好きなことがあった時に、周りの人達との人間関係を崩す行為は「好きなこと」を推す有効な行為ではないという理論からです。最近の 『Authenticity オーセンティシティ とは』 で記しました。

Authenticity オーセンティシティ とは ゲーマーのコミュニティとは

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