恋心は超グリーディ

普段質問されることを文章起こした場所です。ライブ配信やゲームイベントにまつわるものです。もしくは、たまに筆者の趣味の文章が交じります。

Apr 21, 2020 -

Esports の定義について汎用性を持たせるなら

Esports の定義について、次の投稿の議論で用いるために便宜的にこちらで一度噛み砕くこととしました。

※追記:こちら一度書いたのですが アップデートした 2021年の記事 を記したのでこちらは読まれなくて結構です。

この内容は過去に講演で出したモノの再収録となります。過去に講演で出したものを再録しようと考えましたのは、 次の投稿『“Esports後進国理論” の起源』 で曖昧さを回避するためです。どうかそれを念頭に置いて下さい。

次の記事を含めても何か強く決めたい訳ではないのですが、自分の中での論理の満足感を得たいため、この度はじめて esports を主題にした内容を記しました。突飛な内容ですがそれに相応しい程度の受け取り方をして頂ければ大丈夫です。「こういう詭弁家がいるんだなあ」と思って下さい。

はじめに

まず筆者の中で esports の定義は「Dota2, LoL, CS:GO の競技シーンのこと」です。
これは勿論会社(Twitch)の中の定義ではないですし、一般的な定義ではありません。これに至った経緯を以下に述べていきます。

既存の一般的な esports 定義

それでは一般的には esports はどのように定義されているでしょう?日本語で「esports 定義」ぐぐると一番上には JeSU さん(日本eスポーツ連合)のサイト が出てきます:

「eスポーツ(esports)」とは、「エレクトロニック・スポーツ」の略で、広義には、電子機器を用いて行う娯楽、競技、スポーツ全般を指す言葉であり、コンピューターゲーム、ビデオゲームを使った対戦をスポーツ競技として捉える際の名称。

一方の Wikipedia の esports ページ は現在渾沌となっており、明確な定義は見つけられません。いや寧ろ明確な定義がないことを、例の羅列によって示しているとも言えます。

論理の弱点

この定義には弱点があります。定義文が論理式・論理の描写である以上どうしても発生する風土病のようなものです。その弱点とは、境界線がしっかり引けないという点です。

今日本のみならず世界でも esports の線引は曖昧になっていることが不文律で知られています。その例を出しますと、

  • バトルロワイヤル系ゲームは esports ですか?
  • RTA (Speedrun) は esports ですか?

この問について、永遠に結論のない議論で戦い続けてます。もしくはご自身の中に「真・偽」の答えがあったとしても、人は議論をしていることをご存知のはずです。「哲学」や「勝利」に定義がないように “esports” にも一般的な定義はなく、綺麗に恣意的な線を引けた人はいません。

更に esports に親しい方は、もっと議論の対象があることをご存知でしょう。例えば「競技シーンが根付いていないけれどゲーム会社が esports として推進しているタイトル」は esports に含まれるでしょうか?また、esports チームが「ストリーマー」を抱えていることが多くあります。この esports チームに所属するストリーマーを「esports の人材」と呼べるかどうかも頻繁に議論されます。

※註釈「ストリーマー」:「配信者」とも。ゲーム実況のライブ配信をするインフルエンサー。…これだけならばゲームの外の方はイメージがわかないと思います。外部の方にご想像頂くには、例えば仮にJリーグの球団にジャニーズタレントを宣伝役として所属させて、そのタレントは試合には出ない場合、そのタレントは「プロサッカー選手」と名乗れるかという議論です。

自分の転回

このように、esports の定義を論理で描こうとすれば線引が明確でなくなることは、どうしても避けられない事態かと思います。線引を曖昧にすることが目的の場合は、かなり目的を達成しているとも言えましょう。ただ筆者は、矛盾のない文で、線引がしっかりした定義を、自分の中だけでの訓戒として用意したいと思い立ちました。そこで派手に言ってしまえば論理のコペルニクス的転回を使いました。以下の定義に至ります:

「Esports とは、Dota2, LoL, CS:GO の競技シーンのこと」― ①

です。先に論理を用意することで「このゲームは esports ですか?」という問に曖昧な線引になってしまうことに対し、先にゲームタイトルから列挙することで議論の余地をシャットアウト出来ます。定義をこの形にする発想に至ったのは2018年なのですが、狭い定義を用いるのは論理の整合性が取れるからであって、決してゲーム毎の資格を問うためではありません。

※註釈:本来はそのゲームタイトルが esports に当てはまるかという包含関係は無く、各ゲームタイトルの中に esports たる部分集合があるかを見るべき(esports ⊆ あるゲームタイトル)。そう個人的には考えております。

また、こちらは自分が自律として持ち歩くために、または単に論理の満足感を得るために使うものであって、他者に押し付けるものではございません。
例えば自分がプレイしている「スマブラSP」は esports ですか?とどなたかから訊かれましたら「たぶんYesな気がする」と答えたいですし、他の方から「R6S」は esports ですか?と訊かれましたら「はい」だと答えます。細かい定義は他人に強要するものでもありません。ただ自分の矜持として定義に論理の整合性を取るためにこの定義を用います。では①に照らし合わせるとスマブラは何であるかというと、potential esports(esports たりうるもの)です。

ということで、こちらの定義①は振りかざして使うものではありません。より一般的に使える定義はどのようなものであるか、更に以下で述べることとします。

一般的な定義を設けるなら

筆者の定義①は狭い定義であると考えています。より狭い定義を設けることも可能ですが、①が比較的狭いということには異論はないでしょう。そこでより一般的な esports の定義を用意して人前で活用する場合は、明快であり議論に適用しやすいものが好ましいです。今産業を取り巻く大会・チーム等を包括的に表現するにあたって、便利な表現を用意しておきたいと思い、この投稿に至ります。

で、結論から申し上げますと「ゲームの二次産業」―② と設けたいです。

例えば「電子機器を用いた競技」のような内容にしますと、ビームライフルを用いた射撃競技などを排除できません。ここは確認しておきますが、ビームライフルのような電子機器で競うものは esports に当てはまらない(通常のスポーツ)でよろしいかと思います。
そこで、たいてい「デジタルゲームを用いた競技」という内容に持って来やすいのですが、問題になる議論を上で挙げています:「ストリーマーはどうなりますか?」という議論です。Na’Vi や Red Bull OG のようにストリーマーを持たないチームもございますが、TSM や Cloud9 といったチームもストリーマーを持っています。

筆者個人の意見を申し上げますと、純粋なストリーマーは esports に含まれません。「そんな殺生な、それでも Twitch の者か」とツッコミたくなるかもしれませんが、プロのストリーマーは厳しい世界です。元プロゲーマー(アスリート)が競技時代の人気を背景に引退後ストリーマーへ転向しても、必ずしも順調に行くわけではありません(勿論ストリーマーがプロゲーマーに転向できるわけでもありません)。ストリーマーはクリエイターとしての技術が求められる一方でビジネスマンでもあり、最近では腕前の要求水準も上がっているため一筋縄では行きません。

この辺の議論はさておき、筆者個人の水準は持ち込みません。JeSU さんはストリーマーを特に意識した活動はされていないようですが、タイムアタックはある程度視野に入れてらっしゃるようです。RTAとは少し毛色が異なるようです。でも確かに、Tempo Storm のようにRTA走者 (speedrunner) をチームに入れているところもございます。この辺りは境界線がどうしても曖昧になりますが、今回は筆者個人の定義が実に狭路に設定したので、なるべく広く・なるべく網羅的に(JeSU さんも Tempo Storm も)カバー出来るような定義を用意できればと思いました。

定義を広く取ることで適用されるゲームタイトルに対して「そんなものは esports ではない」と云いたくなる方のご意見も分かります(例「スマブラは所詮プレイヤーが若くて遊びだから esports ではない」というご意見を頂いたことは複数あります)。そういった信条があるからコンテンツに重みがあって面白い訳です。ただ各々の信条に左右されてしまう定義ですと前提として使いづらいです。個人個人の信念に照らし合わせた対照表を作成したいわけではなく、議論に適した内容を今この限定的な状況で欲しています。

そこでなるべく広義に捉えた、急進派の中の急進派とも謂うべき「ゲームの二次産業」に思い当たりました。これならば LAN Party なども含めることが出来て、なんとなく昨今の温度感にフィットするかと存じます。(例えば LAN Party は、歴史上全てが競技者によって構成されていた訳ではありませんが、DreamHack などで一部が決戦の舞台として使用されてきた側面もあります。そういった時に、部分的に当てはまるものを完全除外するのではなく、片脚突っ込んでいるので含められるという定義は、汎用性が高いかと存じます。)

ただ②だと少し広すぎて、明確に異なるものも含んでしまいます。例えばファンアートであったり編曲であったりです。そのため、あまり小細工的な補足は好きでは無いのですが、以下の定義で完成とします: 

「ゲームの二次産業のうち、ゲームプレイを伴うもの」―③

これですと、「esports は〇〇であるか」を議論するとき、最大解釈である③まで議論しておけば十分条件ということになります。そのため、議論する時は③まで満たしているかどうかを活用しようと思います。

ゲームの二次産業とは

③ゲームの二次産業についてイメージしているものを例示しておきます。

多くの人が esports を挙げる際に、だいたい包括的に議論を範囲内に収める事ができる定義かと思っています。そのため、

  • ゲームを用いてイベントを開く
  • ゲームを用いてライブ配信をする
  • ゲームを用いて動画を作る

といった内容が対象となります。逆に「同人ゲーム」と呼ばれるものは、日本では比較的盛んに作られて来ましたが、これは自分でゲームを作っているためゲームの一次産業に入るとここでは考えます。(勿論、マンガの同人誌もオリジナルモノがあるわけですが、割合的に明示できませんが「〇〇オンリー」と呼ばれる同人イベントは二次産業のみで成り立っています。)Mod は二次産業に入るのも納得頂けるかと思います。

以上

競技の外側まで取ってしまったので、もはや「esports の経済圏」とも言うべき広さになってしまいました。やはり本当に esports の境界線を線引するのは御本人の意思次第かと思いますが、議論を完全に網羅したか納得するには③まで身構えておく必要があります。

根本的には 次の投稿『“Esports後進国理論” の起源』 のためにこちらを別パートとして用意しました。よろしければどうか次もご一瞥ください。

スター☆トゥインクルプリキュア 解釈 “Esports後進国理論” の起源

comments powered by Disqus